雪沼とその周辺
作者 堀江 敏幸
価格 1,470 円
出版社名 新潮社
出版年月 2003/11
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    第40回 谷崎潤一郎賞   受賞
山あいの静かな町・雪沼で、ボウリング場、フランス料理屋、レコード店などを営む人々の日常や、その人生の語られずにきた甘苦を綿密な筆づかいで描く連作短編集。

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■読者の評価     おすすめ度平均

と、ある視点       おすすめ度
ずっと昔のことを思い出した。
美術館に展示された写真を執拗に眺めていた。
疲れて中央にあるいすに座った。
そこからは、眺めているも含めて写真となった。
と、その視点。

立ち位置を変えると、ものの見事な音が反響する。
衝撃的な小説でした。



名作!       おすすめ度
「センターの問題が面白かったので読みたい」と娘がいうので、購入しました。
暇ができたので読んでみると、「スタンス・ドット」で眼が潤みました。
「イラクサの庭」でまた泣けました。著者の年齢を確認すると、私とほぼ同い年でした。!。
一方で、「レンガを積む」には笑いました。周りに人がいなくて助かりました。ほろ苦いユーモアがすばらしくて、よかったです。
娘に聞くと、「微妙だった」の一言でした。意外!。この魅力は若い娘には理解不能?。
ともかく、私には三浦哲郎以来の衝撃でした。現代文学の旗手の一人には違いない気がします。


堀江さん色は少し薄いけど...       おすすめ度
堀江さんの作品の中で私が読むのは初めてのタイプの連作短編集です。タイトルの通り、おそらくは架空の『雪沼』と呼ばれる地域に暮らす人々の生活を少しづつリンクさせた短編集す。そして、堀江さんの作品の中では堀江さん色の薄い作品ではないかと思います。


堀江さんのらしさ、あるいは特徴が他の作品と比べて少し弱く、何だか「神の子供たちはみな踊る」以降の村上 春樹さんに近く感じました。その事によって初めて堀江さんの作品を読む人にオススメしたい作品になっているとも言えますし、今まで読んでいた堀江さんの作品が好きな人にはちょっとオススメしにくいかな?と。


もちろん何の変哲も無いある場面の描写から始まって、なだらかに流れる様に進んで最後にはすっと納まる話し、あるいは比較的長いセンテンスを使うとか、その他の堀江さんの特徴もありますし楽しめもするのですが、今までの堀江さんの作品の方がより強かったと思います。


私が好きな章は、閉鎖する事になったボウリング場の最後の一時を過ごすオーナーの話しの『スタンス・ドット』と、山あいの農家の娘とその農家に書道教室を開いた先生との話しの『送り火』が良かったです。


大学入試センター試験2007       おすすめ度
本書の中の「送り火」が2007年度大学入試センター試験(国語)に出題されました。最初はファンとして晴れがましいような気分もあったのですが、よくよく考えたら、著者の小説を試験で読ませられる若者が気の毒に思われて・・・じっくり味わってこその作品なのに。

思わず、いくつかの予備校の問題講評をチェックしてしまったのですが、そのうちのひとつ。「息の長い文体と独特のリズムで表現されている文章からの出題。内容的にはそれほど難しくはないものの、ストーリーの展開上重要な出来事がさりげない描写で述べられているため、小説を読み慣れていない受験生にはやや読みづらいものだったかもしれない。シチュエーションや登場人物の心情を丹念にたどりながら読み進めることが求められた」・・・時間配分に気を配りつつ読まなければならない受験生の皆さんは気がもめたことでしょうし、苦労されたかたも多かったのでは。別の分析では「解答の根拠が明確でなく」と書いてあるものも。実際自分も解いてみて、マークシートなので一応全問正解はしましたが、いささか首をひねりつつ選ばざるを得なかった正解もあり、改めて文学作品を入試問題で扱うことの難しさを思いました。

受験生の皆さん、本当にお疲れさまです。そしてぜひいつか、著者の作品をゆっくりと読んでみてください!



見えざる第三者(たち)       おすすめ度
雪沼という(その周辺に住まう民意の総体としての)神の視点。
各話の主人公たちが「彼」や○○さんの敬称を付けて呼ばれているのはそのためで、彼らの後ろに語り手としての雪沼(神の視点)が在る。けれどもそれは全智全能の神という訳ではなく、時には雨を止ませたり偶然的に(都合よく?)昔の出来事を思い起こさせたりとささやかな奇跡は起こすものの、ほとんどは人の意識に自由に入り込むだけの傍観者に徹している。
あるいはそれは神というよりも人々の意思の集合、というと超常現象的な響きがあるかもしれないが、そんな大袈裟なものではなく、例えば集団生活(コミュニティ)における規律というか、ある種の慣習のようなもので、人々が意識しない程度の抑制と拘束力を持っている、そういったものに近いのかもしれない。強く縛りつけられている訳ではないけれど、強いて出ていくこともなく、絶対的守られている訳ではないけれど、日々穏やかに暮らしていける、半ば現実的に半ば夢見心地に本書の登場人物たちは雪沼という地に生きている。