ディスコ探偵水曜日〈上〉
作者 舞城 王太郎
価格 2,100 円
出版社名 新潮社
出版年月 2008/07
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■読者の評価     おすすめ度平均

うわああああああああってなる本       おすすめ度
こんなに面白い小説だったなんて。読みながら何回もうわああああああってなったけど。この長さを感じさせないテンポ良すぎる文体で、読むの遅い僕でもあっというまだった。
こんな本読んだの初めてになるのは当たり前で、この舞城さんの本を初めて読んだときに感じたうわあああよりも更にうわあああああああああああああ。
まだ下巻は読んでないけど、上巻だけでも相当世界が変わった。この世はどうなってしまうんだな一冊。


拡大した世界を包む、舞城の「意思」       おすすめ度
一応の表向きはミステリー小説の体を成し、本当に多くのトリック
やドンデン返しが散りばめられていますが、(特に上巻は清涼院流水氏『コズミック』を彷彿させるような不条理トリックのオンパレード!)この本筋は主人公 ディスコ・ウェンズデイ(≒舞城王太郎?)
の文字通り「強い意思」によって駆動されてゆく、ハードボイルド小説として読んでいくことができました。

小説全体の完成度はさておき、末広がりに拡大されてゆく小説内世界を維持し、展開してゆく力量と胆力には感服。枚数に比例する迫力がありました。すごい!
特に物語の終盤は、中盤に広げた大風呂敷が、さらに接いで巨大化してゆくので、
「おいおい、大丈夫かよ。舞城!」と突っ込みたくなるような展開でした。
ただ、一応それなりに収束はしていきますが、首をかしげる所も多々あり。
私の努力が足りなかったのでしょうが、この物語世界を完璧に把握できた(もしくはしようとする)読者が果たしてどれだけいるものか・・・。(私にはこの世界の詳細な理解がこの小説の本筋ではない、と思いましたので気にせず読み進めました。)

テクニカルな部分は抜きに、その底流に流れる舞城っぽさというか、恥ずかしげもなく晒される青臭い倫理観(否定的な意味でなく)は、『阿修羅ガール』『世界は密室でできている』『みんな元気。』『好き好き大好き超愛してる』から一貫して見られる従来の舞上節が全快です。

その部分を多少なりとも期待されている方には買いかな、と思います。
特に終盤へと加速してゆくところは、『阿修羅ガール』の後半部分と近似しており、舞城思想の水先案内人(?)桜月淡雪も登場。舞城の小説って・・こう、なんだか毎回作家自身に萌えてしまいます。


推理合戦は某御代の大説を彷彿と…       おすすめ度
舞城史上、最長かつ最高に難解な小説。

とにかく難しかった。めちゃくちゃ頭を使ったよ。

読後感は、難しい数学や物理の問題を考えて考えて解いた後の頭脳フラフラ状態の時に似てたような。

自分にとっては疲れる小説だった、というのが正直なところ。 某御代の大説的な疲労感やストレスが溜まる小説だったんだよね。
いいかげんにしろ!と本を壁に投げつけたくなるあの感じ。
特に推理合戦パートは苛々したな。あんなのもう何でも有りじゃん。それはこの小説全体に対して言えることだと思うけど。

でも、こんな難解で哲学的で学問的でミステリ的でメタメタな小説を書けてしまう舞城の力量はやっぱり凄まじいものがあるな、と感心した。

スゲーよ、舞城。どんだけ頭がいいんだよ。
やっぱり舞城は並の作家ではなかったと。 この小説を苦労して読んで、確信した。
これからの舞城の動向が気になるし、めちゃくちゃ楽しみだな。
でも、次はもうちょっと大衆ウケを意識した小説を書いて欲しいかな。
今回はちょっといくらなんでもいろんな意味で難し過ぎたと思うので。重ねて言うようだが。




イロモノ→アンチ・ミステリィ→SF       おすすめ度
最初は本当に脈絡無くエログロ描写が出てきます。
「こういうことやめてくれよな」そう思いつつも疑うような手つきでページをめくっていきます。ですが、そんなシーンに出てきた意味深長なセリフが、まるでリフレインのように度々繰り返されていきます。そうして進むにつれてその反復と共に場面が、世界が、スケールがどんどんと大きくなっていきます。誇張ではなく。
自分は上下二つを読み終わったとき、小栗虫太郎の黒死館殺人事件を思い出しました。引き合いに出されていく知識は北欧神話、タイム・パラドックス 、インドネシア語、マダガスカル語(!)、と雑多ですが、それら全く接点の無さそうな要素が交じり合い、最初に啓示されたエログロに集約されていく様は、読んでいて自分の世界が変えられていく気分になります。
今回の作品から従来のものと同じ匂いを嗅ぎ取るということは、すこし難しいかもしれません。しかしながら、この作品で見られた作者の『変容』を、自分個人はとても嬉しいものに感じます。
間違いなく、読む人にとって「初めてのタイプ」になる本だと思います。


すべてひっくるめて星五つ       おすすめ度
次々に現れる困難や疑問に懊悩するディスコの姿は、ミステリーや純文の狭間で懊悩している舞城自身に思えた。所々に自作のタイトルをちりばめる手法に(物語の中ではそれらタイトルが結構重要な機能を果たしている)、今作によって作家として一つの区切りのようなものを示したかったのかな、とも感じた。または、キャリアの総括、みたいな。読了してから色々考えてるけど、それは作品の内容にではなくて、あくまでも舞城王太郎という作家のスタンスに対して。読書をしてこんな気持になるのは初めて。
今までの舞城作品を期待するとちょっと「?」かも。舞城初体験者は絶対「×」だよ。
でも、確か去年の6月頃に一度今作の発売案内出てたよな〜(無料と思いきや有料の冊子、『波』の巻末にちーっこくだけど)。それをキャンセルしてまで書き下ろし加えるその姿勢が必死で本気で、良い感じ。下巻はまるまる書き下ろしだし。
下巻の章題は「方舟」。連載当時、舞城自身書き進める中で収拾がつかなくなってしまったんじゃないかな。ほんとスケールでかすぎだから。紙と文字で表すの不可能なくらいスケールでかい(実際やたら図説多い)。それを救おうとして、リスク背負ってでも書き下ろさなきゃいられなかったんだろう。妄想に過ぎませんが。あ、この話って大雑把に言って「救済」の話だよな……物語を作家が体現している!? 妄想に過ぎないけどそう考えるとやっぱ凄い作家で、その労力と腕力に星5つです。次作に心底期待大。