スティル・ライフ (中公文庫)
作者 池澤 夏樹
価格 500 円
出版社名 中央公論社
出版年月 1991/12
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■読者の評価     おすすめ度平均

マイベストストーリー       おすすめ度
淡々とした静かな展開。
かなり大それた犯罪者なのにすっとした佐々井の姿。
何にも捕らわれないその生き方が理想です。

多分20年ほど前に購入したから当時は新刊だったのですね。
手元に本を残しておくことの少ない私が今まで持ち続け、
これからも手放さないと思う一冊です。

自分の生き方の根本になっていると思います。


必読       おすすめ度
とっても、刺激的な本。

出だしも。価値観も。
いつも手元に置いておきたい本の一つ。


佐々井とは誰か       おすすめ度
池澤氏は、本書の『スティル・ライフ』を、日野啓三氏の『Living Zero』というエッセー集に触発されて書いたと公言されていますが、主人公の話し相手となり、科学について語り、最終的に宇宙人として比喩される、佐々井という人物は、何やら日野啓三氏がモデルとされているような気がしました。因みに、「向う側」という単語もさり気無く作中に用いられていますが、これは日野氏のデビュー作のタイトルです。

何はともあれ、『スティル・ライフ』にせよ、『ヤー・チャイカ』にせよ、簡素な文章を用いた、何処となく懐かしく、ひっそりと静まりかえった世界観は、確かに居心地は良いですが、何か今ひとつ、筆者独自の核となるようなものが希薄であるという印象を持ちました。それでもまあ、難しい思想やら哲学やらを省いて、美しい短編映画のような世界に浸りたいという気持ちの時に、本書は文学としてその役割を果たしてくれるということは、凡そ間違いありません。


うーん       おすすめ度
 昔、夏樹静子とごっちゃになっていたことがある。最近まで女性だと思っていた。
 しかし、素晴らしい。現在の芥川賞で前衛の文学を評価してくれるのは山田詠美と池澤夏樹さんだけで、そんな人の書いた作品は、やっぱりすばらしかった。
 科学、と結び付けられて語られるているようだが、果たしてそうなのだろうか。この人の文章は何気に壮大だ。たった数十センチ四方の紙に描かれた文章だけで、宇宙の果てまでぶっ飛ばされ、雄大な気分に触れる。科学に関する会話があろうとなかろうと、それは変わりないのではないか。宇宙まで飛べるのは文章の力。
 人間が宇宙に行ったのは科学の力だが、宇宙へ行こうという発想は、たぶん、科学ではないから。
 さて、表題作の芥川賞受賞作、「スティル・ライフ」もいいですが、個人的には「ヤー・チャイカ」のほうが上ではないのだろうか。人間が自分以外の存在にしずかになろうとしている瞬間を繊細に描いている。老婆になっても恐龍に餌をあげつづけようとするカンナの描写がうますぎ。


”芸術的に、そして哲学的に意味づけられた科学”で織られた       おすすめ度
「大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界とのあいだに連絡をつけること、一歩の距離を置いて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星を見るとかして。」

この冒頭の文に、
「スティル・ライフ」というストーリーの
魅力が凝縮されている気がする。

”芸術的に、そして哲学的に意味づけられた科学”で織られた
美しいストーリー。

雲のような霧のような小説で、繊細な粉のように、
読んでいる自分に溶けていくけれど、
その溶けたものがどれなのかがわからない、そんなような
すごく不思議な感じだった。

この小説があたしの中にどう溶けたのか
まったくわからないけれど、
もう一度、いつかもう少し大人になったら、読んでみようと思う。