高松宮と海軍 (中公文庫)
作者 阿川 弘之
価格 680 円
出版社名 中央公論新社
出版年月 1999/04
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■読者の評価     おすすめ度平均

高松宮日記について       おすすめ度
 1996年に出た単行本の文庫化。
 1995-97年に中央公論社から出た『高松宮日記』(全8巻)の解説。編集作業に携わった阿川氏が、日記の発見から公刊までの経緯、内容紹介、第二次大戦と日本海軍について語っている。
 高松宮は昭和天皇の実弟。第二次大戦期には海軍将校として活動していたが、陸軍の上層部などとは反りが合わず、東条英機の暗殺計画にすら関わったと言われている。その日記が発見、公開されることになったのである。
 3つの文章が収められている。「高松宮日記編纂記 前篇」は、日記が発見されたというニュースが漏れてしまったため、事態の収拾を狙って書かれたもの。「後篇」は途中経過。宮内庁から横やりが入ったり、プライバシーに関わる部分をどうするか、編纂者が次々と亡くなってしまったことなどが書かれており、なかなか興味深い。
「海軍を語る」では、自身の海軍体験をもとに、当時の日本海軍の実態を明らかにしようと試みている。従来の阿川氏は、海軍の持っていた、イギリス風の自由を賞賛してきた。しかし、本書では戦争の進捗に連れて硬化していったさま、戦争責任についてもきちんと語られている。
 あくまでも『高松宮日記』に附属する本であり、これだけで楽しむのには向かない。


真の「よき海軍」を思う       おすすめ度
本書は「『高松宮日記』編纂記」と「海軍を語る」から構成され、前者は『高松宮日記』(全8巻)の編纂から刊行までの経緯を様々な談話を交えつつ記され、後者は日本海軍の気風や伝統について軽快に記されている。

とりわけ、井上成美元大将が「海軍のいけなかつたところを、どんどん書いとけ。構ふもんか。自由な批判が無くて何が海軍だ」と述べているところや高松宮宣仁親王が「海軍の美点長所ばかり書いてゐても、後世のためにはならないからね。むしろ、欠点短所を書き残しておくと、それが後世の役に立つ。これからは、海軍のよくなかつた面も堂々と書き給へ」と述べているところは印象深い。諸手を挙げて賛美することだけが、海軍の「愛し方」ではないということをひしひしと感じる。

ちなみに「付録」の「次室士官心得 抄」と「海軍士官として心掛くべき主なモットー」も面白かった。堅苦しい史料や文献の精読に疲れた時に一息入れて読んでみると少し気分が和むのでオススメしたい。


宮日記読破の箸休めにおすすめです       おすすめ度
編纂記としては面白く読めます

妃殿下はもちろん、細川護貞さん、大井篤さん他、昭和史の生き証人勢ぞろいといった感じの関係者の皆さんとのやりとり、大井さん豊田さんといった中心的メンバーを道半ばで失うという出来事などなど、高松宮日記の編纂記としてなかなか面白い本です。

高松宮日記はそれ自体、極めて重要な史料なのですが、細川日記、木戸日記などとの照合が可能である事により一層史料価値を高めている事は言うまでもありません。
不思議なことに、著者はなぜかこのことに触れていません。
多忙な編纂に際して、そのようなクロスチェックまでは手が廻らなかったからという理由も勿論あるでしょうが、どうもそれだけでは無い気がします。

恐らくそれに触れれば、それらの記録との矛盾や、宮が書き残して然るべきでありながら、あえてそうしなかった事柄が浮上して来る事になる。
そして、宮がなぜそのような形で記録を残したかにも触れざるを得なくなってしまいます。
実際に宮日記を読んでみると、私程度の者でも「おやっ」と思う所が幾つかあるのだから、この本で唯一そういった話題に触れている東条暗殺以外にも、著者や編纂関係者が不思議に感じ、またそれについて議論した事はあったと思われてなりません。

その議論は是非聞きたかったと思いますが、忠義の文士である著者にとって、親王のお心を詮索するのは畏れ多い事だからあえて触れないようにしたのでは無いかと感じました。
このあたり、少々不満でもあり、微笑ましくもありと感じた一冊でした。



歴史資料としての価値       おすすめ度
昭和の皇族の視点としての歴史資料の価値は認めます。戦時中の昭和天皇の弟宮の目を通しての世相や海軍生活を覗ける高松宮の日記は毛色の変わった資料です。単なる日記のコピーではなく阿川弘之が解説を入れてくれているので実に読み易い。

そうなんですが当時の天皇をはじめ皇族は飾り物に過ぎなかったので、その皇族の日記も肝心の部分が欠けていたりしているようで戦時の歴史資料として活用しようとする人には期待はずれになるのではないかと感じられます。