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■読者の評価
おすすめ度平均
美しく香る文章 おすすめ度
1章の半分も読まないうちにはたと気付いたのだけれど、とても自然に頭の中に情景が組み立てられているのです。例えば、坂があって途中に娼家があって、坂の下の方には酒屋や菓子屋、銭湯がある。坂の上には寺があって、金木犀が植わっている。そういったことが決して説明的でなく、でもしっかり書かれているから誰でも間違いなく位置関係などを把握することが出来る。これは久世氏が演出家だからなのでしょうか、この作品をドラマにしようとしたら迷うことなくセットが組めそう。とにかくドラマっぽいのですね(悪い意味ではなく)。
例外は匂いでしょうか。とにかく匂いに関する描写がたくさん出てくる。金木犀の香り。女郎部屋の消毒薬や体臭。文章は匂うけれど、テレビドラマでにおいを表すのは難しい!。だからそのうっぷんを晴らすかのようにやけに文章は匂うのかな。
それにつけてもすべてが美しく明るい。女郎も然り、主人公の狂った姉も然り、きわめつけは義眼の裏に天皇陛下の肖像を入れているという革命家なのだが、そういった人たちが決して陰鬱でもなく、不気味でもなく、美しく描かれている。そういうのを嘘だと言う人もいるかもしれないけれど、私は小説なんてフィクションなのだから嘘は当たり前、美しいだけの世界があってもいいと思うんです。

