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それにしても、この本が書かれた昭和40年代にはキムチはまだ日本では一般的ではなかったようだし、上海蟹なんかも知られていなかったようだ(もちろん壇さんは、それが日本にも生息するモクゾ蟹であることは知っているが)。ぼくたちの食生活、食材というのは高度成長期とバブル期に、どれほど豊かになったのか、と改めて感じた。
しかし、まだ檀さんの贔屓にしていたスペイン(と一口にはとても言えないのだが)とポルトガル料理に関しては、まだぼくも食べたこともないような田舎料理を紹介しているのは素晴らしいと思う。ポルトガルに関しては「初鰹をサカナに飲む銘酒・ダン」という章がある。七輪に炭火をおこして焼鰯でぶどう酒をあおる、というのがいい。その章で壇さんが特に気に入ったと書いていたのは「ゴジドー・ポルトゲーゼ」、つまりポルトガル煮。血を吸う蝿に悩まされながらも「酒ならダン」と口走っていた、と書いている。
後はペトルーシカ(петрушка=コリアンダー、中国パセリ、イタリアンパセリ)をたっぷり揉み添えた羊肉のバーベキューの話@ソ連は『わが百味真髄』でも書いているけど、何回、読んでも旨そうだ。
あと、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」とこの薬味とは関係があるのだろうか?いろいろ妄想が膨らむ。ソ連(もうないんだよな)の旅行記で面白かったのは、女医さんたちとシベリア鉄道でコンパートメントを一緒にして、飲みかつ喰いまくる場面。女医さんたちとはドイツ語で語り合ったそうな。なかなかやるなぁ。
とにかく、そんじょそこらのグルメ本を何冊集めたって、檀さんの本一冊のスケールにはかなわないと思う。

