猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)
作者 カート・ヴォネガット・ジュニア
価格 630 円
出版社名 早川書房
出版年月 1979/07
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■読者の評価     おすすめ度平均

ナイスナイス、ヴェリーアイス・ナイン。       おすすめ度
科学と宗教と政治を生暖かい眼差しで見つめた小説。
科学は物質的に世界を破滅させ、宗教は幻として人心を包み込み、政治はいい加減に且つそれらしい体裁でもって進められる。

皮肉とユーモアに満ちた作品でありながら、
どこか人間に対する暖かい眼差しを感じる。
これは新しいヨハネの黙示録。


秋の夜長向けかも       おすすめ度
「「雲」の楽しみ方」という本でこの作品のアイスナインについて触れられていたので、興味を持って読みました。
奇妙な話なので、前半は話が掴みづらいと感じていました。
しかし読み進んでいくと、ある時急に話の大枠を把握できてきて、スッキリしてきました。
一度把握すれば、気持ちよく読み進んでいくことができました。
さらに再読すると、今度は前半からスッキリと読めました。
どうやら寝る前に数分ずつ細切れで読む本には向かないかも知れませんね。
内容については多くの方がレビューしている通り、傑作だと思います。
できれば時間を作って、じっくり読みふけりたい本だと思います。
内容についてのレビューは既出なので、こんなことを書かせていただきました。


ヴォネガット教の聖典       おすすめ度
約四半世紀ぶりに再読したが、エセ宗教であると教祖ポコノン自らが述べているポコノン教の聖書(「ポコノンの書」)の一節(カリプソ)のようにナイス、ナイス、ヴェリ・ナイスと評価したい。作者の本の中で一番奇妙奇天烈度が高いが、明確な輪郭を与えられた個性的な登場人物達が宿命的にサン・ロレンゾ島に集結し、ドタバタ劇のあげくに世界を滅亡させ、ごく少数が生き残るまでを描くストーリー・テリングの技はヴォネガットの長編の中でも一、二を争う出来。その裏には科学の進歩の成果の管理を誤ることの恐ろしさ、家族のあり方、救いようのない貧しい国の存在といった重いテーマを抱えている。

「わたしをジョーナと呼んでいただこう。」から本文が始まるように、本書は旧約聖書を意識させる。旧約聖書ではノアの洪水で世界が滅んだ後、箱舟からまた世界中に生命が拡がるが、本書では世界滅亡後、残った人間は子孫を残すことに関心のない者ばかり。彼等が「スイスのロビンソン一家」のような生活を送った後には、荒涼とした世界しか残らないだろうことを暗示させる本書終末部に人間の無力さ・愚かしさ・無常を痛烈に感じずにはいられない。

そして、本書を決定的に面白くしているのはポコノン教。人々の目を現実からそらし、見かけのよい嘘を人々に与えるべく作り出され、人々に生きるはりをつくるために信者である権力者に自身と宗教の迫害を教祖が依頼する、とんでもないニセ宗教であるにも拘らず、島民全部が、そして主人公までが惹きつけられる、人間世界の真実をカリプソで語る名言の数々と奇妙な儀式。人間と宗教の関係について考えさせられる。ポコノンの書以外にも登場人物の言葉には名セリフが多い。嘘から真実に迫る戯作者ヴォネガットの面目躍如の、ヴォネガット教の聖典と言える一冊である。


もう一つの側面       おすすめ度
アイス・ナインというクールなアイテム、
形而上学やそれに支えられた近代的社会へのまさに妙薬であるボコノン教。
このような独特な場面設定が、この作品にカルト的な魅力を与えていることはまちがいないだろう。
しかし、敢えてもう一つこの作品の核を挙げるならば、
それは「孤独」である。
アンジェラ、フランク、ニュートそれぞれの孤独。
巨大な破壊力が孤独な人の手に渡ったとき、
何かが起こるのはもはや必然ではないだろうか。

ありふれた孤独を前に、理性は、あまりにも頼りない。


足の裏と裏を合わせてー       おすすめ度
全体を見るとシリアスな社会派小説なんだろうけれども、ボコノンの教えが、その堅苦しさを良い具合に中和している。何を訴えているのかということが明確な作品で、ボコノンの教えは、生物がどこに救いを求めるのかを私に考えさせてくれました。