老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))
作者 小川 一水
価格 756 円
出版社名 早川書房
出版年月 2005/08/09
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■読者の評価     おすすめ度平均

日本人の限界だろうか       おすすめ度
 短編集だが、比較的面白かったのは「ギャルナフカの迷宮」のみ。生き残りをかけた迷路での戦いは、久しぶりにわくわくしながら読めた。ただ、そんな中でも人間て繁殖するんだなーというのが、ちょっと文句のあるところ。
 「漂った男」も、まあまあではある。なまじ通信機があるために狂ってしまうこともできない中途半端な孤独がよく描けている。
 あとの2作は、正直よくわからない。日本人のSFというものをあまり読んでいないので、どんな位置にあるのかもわからないが、続けて同じ作家のものを読もうという気にはならなかった。


浪漫あるSF       おすすめ度
短編が四話収録されていて、それぞれ面白い結末です。
SFをたくさん読む人にとってストーリーの意外性は少ないかも知れませんが、
登場人物が魅力的です。

困難な状況に晒された人間がとる行動に、
哲学的に考えさせられる面も。


生への絆       おすすめ度
 状況設定こそSFのキモである。四編いずれも、すべて違った状況設定で描かれるが、特定の二人に結ばれる絆の強さが印象に残る。それは愛や情動を超えた強い信頼である。
 「漂った男」で描かれる極限状態が、想像を書きたてる。そして最後に示される生への熱く強い意志…。刹那的な享楽や安易な自殺がはびこる21世紀初頭の日本に、ぜひ読まれるべき一編だろう。


ひとつのカラクリをベースにしたハード的SF短編集       おすすめ度
各短(中)編は、それぞれのカラクリや設定をベースにして、突き詰めたらこんなストーリーができた、って感じの小説です。
ハードSFではないけれど、ハード的ではあります。ハード的というところが味噌で、肩に力を入れずあっけらかんとして楽しめます。すべての小説のベースにホジティブ志向があります。その意味でも楽しめます。


渋いけれど、老練ではない       おすすめ度
渋いですね。ずしりと持ち重りのする短編が揃っています。
でも、老練という感じはまだまだ。
勢いあまって突っ走ってしまったり、理屈倒れになりそうな点(他の方もおっしゃってますが、「幸せになる箱庭」はちょっと落ちる印象かな・・・)も見受けられますが、何より生きることに対する肯定感、共感が全体を強く貫いて、それが物語の根底を支えている感じ。
独りよがりなペシミズムがどこにもないのが嬉しい。

同性としては、出てくる女性の造型がちょっと微妙・・・という気がしないでもないですが、主人公はみんな魅力的な血肉を備えています。
「老ヴォールの惑星」の生命体の造型や、「漂った男」の主人公たちのやり取りなど、どこかほのぼのさせてジーンとさせるような箇所が、もっともっと増えてくれるといいですね。