そばかすのフィギュア (ハヤカワ文庫 JA ス 1-4)
作者 菅 浩江
価格 714 円
出版社名 早川書房
出版年月 2007/09/21
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■読者の評価     おすすめ度平均

カバーイラストでジャケ買い       おすすめ度
◆「雨の檻」

 世代宇宙船の無菌室で、
 女性型ロボット「フィー」と暮らすシノ。

 精神衛生上の配慮から、様々な景色を映し出していた窓も、
 今では、雨の景色しか映さなくなっていた…。


 結末では、SFらしいサプライズが。
 「家族」というものの在り方を考えさせられる物語です。



◆「カーマイン・レッド」

 いじめられっ子のサチオと、
 絵かきロボット「ピイ」の交流を描いた物語。


 いじめに苦しむサチオは、ロボットであるために同じく疎外されている
 ピイに自分を投影することを禁じえません。

 そして訪れる破局―。


 感情や嗜好を持たないはずのピイが好きだという
 「カーマイン・レッド」という色と絵かきロボットであるという設定。

 そうした「仕掛け」が、感動的な結末を演出します。



◆「そばかすのフィギュア」

 ファンタジーアニメのキャラ設定に基づいた感情を持ち、
 最新テクノロジーで自在に動くことのできるフィギュア
 「アーダ」と大学生・靖子の優しく切ない交流の物語。


 アーダと靖子は、ともに実らない片想いに苦しんでいます。

 そんな作中作と作中現実の設定が二重写しにされていくことで、
 二人の想いが次第に重ね合わせられ、共振していきます。


 ラストで提示される〈窓辺で待つ女〉というイメージは切なく、
 人によっては自己憐憫に取る人もいるかもしれませんが、
 個人的には、清々しさが勝っているように感じます。
 


心洗われる       おすすめ度
菅浩江さんの本を読むのは初めてですが表紙に惹かれ購入しました。
とてもいい買い物をしました。
どの短編もそれぞれ異なる味わいをもち印象深いです。

冒頭収録の「雨の檻」には新井素子の「チグリスとユーフラテス」を連想しました。
森奈津子からエロをぬいて新井素子を足した感じの端正で清冽な文章に魅せられます。
正直表題作は主人公の女子大生の心理にちょっと添いかねたのですが
(気持ちはわかるけどコリン姫に対する意地悪な視点とかあんまり感心しないなあ…と。
でもそれを含めてアーダの最後の台詞に繋がるとすれば伏線の張り方抜群に上手いです)

「ブルーフライト」のアヤが切実に自分の将来像を模索する姿や理想を希求する姿、
試験管ベビーとして生まれた己の在り方に悩む姿はその青さひたむきさ故真摯に胸に迫ります。

個人的に「月かげの古謡」がお気入りです。
この中では唯一正統派なファンタジーなのですが、めくるめく流麗な文章に酔い
神秘的な雰囲気を存分に堪能できる読後感は至福。
「狂い女の編み物のように乱雑に絡み合う枝」の一文など奇怪な夜の森の情景が鮮やかに目に浮かぶ。

湖上の花から夜毎生まれる美しき女との謎めく問答が
まわりすべてを敵と断じ力のみを信奉する男にもたらしたものとは?

「統治とは何か?」
答えはたった一言です。
とても奥が深い。


全部初めて読んだので星5つです       おすすめ度
『永遠の森』を読んで菅氏のファンになりました。本短編集は初めて手に取りましたが、いずれの作品も物語としての完成度が高く、素晴しいです。デビュー作「ブルー・フライト」は高校在学中に発表されたとのことで、脱帽です。『永遠の森』、『五人姉妹』においても日本の古典芸能をテーマにした秀作が収録されてますが、本短編集の「お夏 清十郎」も、SFと日本文化の美しい融合を堪能できます。短編集『雨の檻』をお持ちでない方はぜひ。


全部新作だったら五つ☆を…       おすすめ度
同じハヤカワ文庫の短編集「雨の檻」を改題して、45 ページの短編「月かげの古謡」を加えたものです。
雨の檻をお持ちの方は、なあんだ、ということにならぬようご注意!
ただし、月かげの〜は満足できる小品です。