火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1)
作者 ジョン・ディクスン・カー
価格 672 円
出版社名 早川書房
出版年月 1976/05
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■読者の評価     おすすめ度平均

ミステリの最高傑作の一つ       おすすめ度
…だと思うんですが,一般的知名度は皆無の作品。その一方で,作者のライバルたるクリスティーの代表作「そして誰もいなくなった」は、巷間比類無きミステリの最高傑作として祭りあげられています。
…カーキチでアンチクリスティーの自分には、非常に腹に据えかねる事実です。
作家を並べてみるに、ストーリーテリング・キャラクターの造形・サービス精神・ユーモアセンス等々どれをとっても彼女とカーでは比較にならないでしょうに。
有名無名問わずカー作品の多くが,馬鹿馬鹿しいと不等な評価を受ける理由の一つに,翻訳の下手くそさ、が考えられます。
もう一つは,マニアックなカーキチ達が密室に拘るあまり,カーのその他の魅力を一切流布しようとしない,その偏執狂ぶりに起因するのではないか(それは早川を筆頭に出版社自身も叩かれて然るべきだが)。

しかしこの「火刑法廷」…上記のマイナスポイントを差し引いても、とにかく素晴らしいです!カー以外の他の誰にもこんなミステリは絶対に書けません。古典なぞと言う言葉ではひとからげに出来ないカーの代表作にして唯一無比の傑作…
未読の方は是非ともこの作品で、稀代のエンターテイナーにしてイリュージョニスト、ジョン・ディクスン・カーを堪能してみて下さいね。


怪奇趣味と不可能トリックの融合の極致。       おすすめ度
本書は、カーの特長である怪奇趣味と不可能トリックの融合が存分に楽しめる作品で、個人的には「★5つ」としたいところである。
冒頭はやたら説明調の文章が続きわずらわしさを感じるが、地下の納骨所を掘り返してみると、マイルズ老人の棺の中が空だったというあたりから俄然面白くなり、そこから先はもう途中でやめられなくなる徹夜本である。

ではなぜ「★5つ」でないかというと、推理作品としてみた本書のメインは、密室状況の納骨所から消えた死体の謎と、ヘンダーソン夫人が見た、開くはずのないドアに消えた「ブランヴィリエ侯爵夫人」の衣裳を着た女の謎にあるが、それらの解決がしっくりこないからである。

まず、地下納骨所を掘り返して、棺の中が空だったというところまでの退屈な作業については詳細に記しているのに、肝心の他の棺を片っ端から調べる作業についてはかなり端折られているため、そこに記されていることはまったく印象に残らない。
そのため後から説明を受けても「そうだったかな?」という感じで、トリックそのものは秀逸であるのに、残念ながら「ああ、成程」と感銘を受けるには至らない。

次に、開くはずのないドアの謎について、その「偶発的な」トリックを支える小道具である、書きもの机の上の「あるもの」については、それまでそういうものが部屋の中にあるということがどこにも記されていないため、「ああ、成程」と感銘を受けるには至らず、むしろフェアさに欠けるようにすら感じる。
それに、ヘンダーソン夫人が「女の首はぴったり体にくっついていなかった」と言っていたことについては未解決のままである。

以上、怪奇サスペンスとしては非常に面白い本書だが、推理作品としては画竜点睛を欠いており、「★5つ」までは進呈できない。
私のストライクゾーンど真ん中の作品なだけに実に残念である。


2つの楽しめ方       おすすめ度
この小説は 推理小説としてのオチ?も理論立てしてあるし、違う もう一つの終わり方にしても納得がいける。

一冊で2通り楽しめるお得な小説です。



カー+E.クィーン+H.マクロイ=火刑法廷 ?       おすすめ度
カーの不可能味とオカルティズムが融合した奇跡的傑作。

主人公が通勤電車の中で見た数百年前の女性毒殺魔の写真の顔が、妻にソックリな点に興味を覚えた時点から物語は始まる。この後、主人公の周りでは不可思議な事件が続くのだが...。

カーの多くの作品に見られる竜頭蛇尾の感じは全くない。その逆で、計算し尽くされた精緻な構成・人物配置・伏線の張り方は驚嘆の的。カーとしては分量は少ない方だが、その中に自身の作風に加え、E.クィーンの論理性とH.マクロイの味をプラスしている想像を絶する出来栄え。再読すると、初読の際に気付かなかった細部の技巧に気付き、驚きは増すだろう。

カー・マニアは勿論、一般のミステリ・ファンにも絶対お勧めの一作。


出来れば予備知識無しで読んで欲しい       おすすめ度
傑作の誉れ高いカーの代表作。
途中無駄な描写などで退屈する部分もありますが、それが最後の謎解きに利いていきます。
特にそのストーリーテリングは絶品で、章の最後にちょっとした(とても大きな)サプライズがあるので読むのをやめられません。
ラストについては、語るのをやめましょう。こんな古い作品でも、いまだに新鮮な驚きがあります。