長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))
作者 レイモンド・チャンドラー   清水 俊二
価格 945 円
出版社名 早川書房
出版年月 1976/04
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■読者の評価     おすすめ度平均

元祖ロング・グッドバイである。       おすすめ度
元祖である。ロング・グッドバイである。
現在巷で溢れている赤と黄色の、拳銃の表紙の、アレである。
アレの元祖である。
僕は10年ほども前に、本書を読んでいるのだが、正直全く内容を忘れてしまっていた。
今回、例の赤/黄/拳銃本を読んだ後、本書を再読したのであった。
ムラカミ版のあとがきにおいて、本書の訳については、若干「細部を端折って」いるとのことであったが、それほど気になるモノではなかった。
ムラカミ版との比較を厳密にするほどの野暮はしておらず、原書との突き合せは一部やったのであるが、確かに比喩や挿入文の一部は訳出されていないトコロもあるにはあった。しかし、同時に「アレ?ここ端折ってる?」と当たってみると意外にちゃんと言葉を拾っていたりして、「しっかりやってるじゃん!」てなことも少なからずあった。
要するに、訳の端折りは、読むに当たってはほとんど問題にならぬということ。
また、やはりムラカミ版が出た「キャッチャー・イン・ザ・ライ」や「グレート・ギャツビー」で強く感じた、訳文の同時代感の喪失というか、要するに「元祖・野崎孝版」の訳文に感じられた古色蒼然たる賞味期限切れ感はなく、「まだまだ、このままでもイケるジじゃん」てな感じであった。
映画の字幕も書いていた訳者によるあとがきも洒脱で良く、1976年という文庫版の発行時期の「時代の空気」がそこはかとなく感じ取れて楽しい。
1988年に亡くなった訳者は、今回のPlay Back「ロング・グッドバイ」をあの世から、どのように見ているのだろうか?


あの1文を語らせるために       おすすめ度
作家には「この1文のために」という作品があるようですが、この小説もまさにそう。終盤に出てくる「ギムレットにはまだ早すぎるね」の1文を語るために、チャンドラーは壮大なミステリーと人間模様を構築したのでした。それ以前のストーリーは、この言葉に重みを持たせるための伏線に過ぎません。

マーロウの生き方は非常に男っぽく不器用で、効率優先の現代社会では通用しないでしょう。それだけに、どことなく憧れを抱いてしまうのです。


スーパーマン       おすすめ度
以前からチャンドラーやマーロウの噂は聞いていましたが、読んだのはやっと最近です。
村上版を読む前の予習として、ハヤカワ文庫版を読みました。
ハードボイルドの代表的作品と聞いていましたが、中々の読み応えで面白かったです。
たっぷりと楽しめた本です。

誉める人は大勢いるようですからそこはお任せして、自分なりに感じたコトを書くと、男の子が描く夢を見せられるような本ですね。
周囲と馴染む方法も知らず、自分を正当化しヒーロー視するような人が、喜んで浸る本だと思いました。
家族に囲まれ、でも軽んじられ、お腹が突き出て、小さい家で生活しているお父さんが、孤独を愛するヒーローに成りきり、現実逃避するためにトイレで読んでいそうな本と書けば分かりやすいかな。
お小遣いを貯めてパイプを買ってしまうような(それを使う場所もなくてね)、あるいはデスクの引き出しにウィスキーを隠していそうな、あるいは夜なのにサングラスを外さないのがダンディだと信じている人にとっては、バイブルのような一冊なのでしょう。

時代を超越して、と書けば格好いいけれど、夢ばかり見て現実に向き合えない、と書けばなるほどと思ってしまう、寝癖とヨレヨレの服が似合うアナクロな男達のオアシスのような本だと思いました。
読み終わると、現実って厳しいと思ってしまう本ですね、大人の童話かな。


マーロウのかっこよさ       おすすめ度
チャンドラーは映画の脚本執筆もしていたということなので、
セリフが粋な感じで、読んでいるうちにその状況が
映画のように頭に浮かびました。
とにかくマーロウがかっこよく、描写もオシャレで
ノスタルジックで話に引き込まれて楽しめました。
シャーロック・ホームズのように架空の人物ですが、
実在するような妙な気持にさせられました。


村上春樹訳が出ているが清水俊二訳で十分       おすすめ度
村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」が話題になったようだが、私は清水俊二訳のハヤカワ文庫
版の「長いお別れで十分」である。私にとっての表題は「ロング・グッドバイ」ではなく「長い
お別れ」なのだ。確かに今、初めて読む人にとっては、村上の新訳が今風で良いかもしれない
が、昔からのチャンドラー・ファンの者にとっては、清水訳を支持するのではなかろうか。
両者の訳に多少違いがあるようだが、瑣末な問題に過ぎない。昔の作品であるし、時代背景を
考慮すれば、むしろ清水訳の方がノスタルジーがあっていいと思うのだが。つまらいこだわり
かもしれないが、ミステリは文庫がいいのだ。「ロング・グッドバイ」の装丁画もマンガ的で
気に入らない。ま、しかし、村上春樹の新訳が出たことによって、若い読者にチャンドラーの
名作が見直されることになったことは良いことかもしれない。また、いつの日か購入すること
になっても、私は文庫版の「長いお別れ」を選ぶだろう。