幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))
作者 ウイリアム・アイリッシュ   稲葉 明雄
価格 840 円
出版社名 早川書房
出版年月 1976/04/30
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■読者の評価     おすすめ度平均

素晴らしい名作       おすすめ度
妻を殺された主人公の男が、妻殺しの犯人として逮捕されてしまい、死刑執行までにその男の親友が、主人公に代わって主人公のアリバイを証明できる唯一の証人(幻の女)を捜す話です。
結構昔の作品ですが古さを感じさせず、先が気になり非常に楽しめました。ミステリ好きな読者は妻殺しの犯人が分かってしまう人もいるでしょうが、私は全く犯人が分からず読んでいたので終盤の真相には驚きました。
江戸川乱歩も絶賛したという話なので、ミステリ好きな読者なら読んで損はしない作品だと思います。


「異議あり!検察官は陪審員を検察官の推定の元に誘導しています!」       おすすめ度
かの江戸川乱歩氏が絶賛し、国内のベストテン常連の不滅の名作。

書き出しの「夜は若く…」は、当時の情景や主人公の前途多難な出来事を
予兆させるに十分に詩的。まず、書き出しが優れている。最初の数行で、
読み手を掴んで離さない。

主人公の友人が刑事の協力の下、証言者にアタリをつける中盤以降が秀逸です。
難を言えば、説明が回りくどい感じを受けますが、それは読者が「次の展開は
どうなる?」と、文字を追いながらも先を急いているからと感じました。
それだけ読者を読ませ込んで行くと言うことでしょうか。

また、時間が経過している様子を16・17・18章をひとまとめにすることで
成功しています。

他のレビューアーの方がおっしゃっている通り、古いミステリーに興味が注がれる
キッカケを与えてくれました。


都会のドラマ       おすすめ度
幻の女を巡るダイナミックな追跡劇をはじめ、サスペンスの盛り上げ方が非常に上手い作品です。今読んでもその面白さはまったく色褪せていません。タイムリミットの設定、魅惑のキャラクター、二転三転するストーリーと、娯楽作品の王道的展開のなかにも、アイリッシュ独特の文学的リリシズムが都会に生きる男女のほろ苦い人生を浮き彫りにし、物語に奥行きをもたらしています。男と女の哀愁が深い余韻を残す傑作サスペンスです。


文句なしの海外ミステリーの傑作。自信を持ってオススメします!       おすすめ度
 文句なしに面白い作品。半世紀も前の作品なので、アメリカ社会がまだ紳士・淑女の礼儀正しさを持っていた時代が読み取れるが、トリックは決して古臭くないし、最初のつかみが非常に強力で、一気に本にのめりこまされた。

 夫婦喧嘩をして家を飛び出し、偶然会った女が、後に妻殺しの罪をかぶせられる主人公のアリバイを成立させるための唯一のキーとなる。しかし、警察が捜査すると、どこにも女がいた証拠、証言がでてこない。

 最初は、こっちまでもが、主人公の頭を疑ってしまった。劇場で黄色の派手な帽子をかぶっていた、その幻の女はどこにいるのか?

 糸をたぐるように、徐々に幻の女に近づいていくのが面白い。乞食やらバーテンダー、南米からきた歌手やら、その場その場の情景が目に浮かぶようで、読んでいて本当に楽しかった。


大騒ぎするほどの傑作ではないけど・・・       おすすめ度
 
 夜も若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった・・・スコットと妻のマーセーラの仲は、すっかり、冷えていた。しかも、スコットには新しい愛人のキャロルがいた・・・
 夫婦喧嘩の気晴らしに夜の町に一人で出たスコットは、酒場で奇妙な帽子をかぶった女に出会う。ひと時の歓談をかわした後、家に帰ってみると妻が死んでいる・・・容疑がかかり、あれよあれよと、裁判にまで進み死刑の判決を受けてしまう。スコットの無実を証明できるはずのあの女は警察の捜査にも関わらず、見つからない。酒場の店員は、そんな女は知らないという。あの女はスコットの幻だったのか?死刑執行のタイムリミットが迫る中、スコットの友人のジャックと愛人のキャロルが「幻の女」の捜索にたちあがるが、刻一刻と死刑執行のその瞬間は迫っていく・・・

 オールタイムミステリベストで上位常連の作品ですね。翻訳の稲葉明雄氏の腕もあるのでしょうが、非常に面白い。特に中盤の展開が見事で各章が独立した短編小説を思わせる構成でサスペンスと高めていきます。いやぁ・・たしかに多くのひとが傑作だというものうなずけます。

 ただ、この作品、アンフェアだと思います。結末の意外性はあるのですが、中盤に大きな嘘が平然と書かれていて、納得ができない。パズラーでないサスペンスものでフェア、アンフェアと言ってもしょうがないじゃん・・・と云う意見もあるでしょうが、自分の意見はむしろ逆でサスペンスものこそ、フェアプレイに徹してほしい。例えば、ジョンなる人物が様々な嫌がらせに出会っているストーリがあったします。ある人物の視点で「彼(彼女)は、ジョンのそんな振る舞いが好きだった」とかかれているのに、実は、その人物はジョンが死ぬほど嫌いで嫌がらせの実行者だったと最後に明らかになったら、どうでしょう?サスペンスもなにもあったものじゃありません。サスペンスものは、登場人物の信頼と不振の揺れ動きを読者が感じてハラハラする要素が多分にあると思います。そこに嘘が書かれていると・・・ちょっとどうなんでしょう。

 べつにこの作品が詰まらないと言っている訳じゃありません。それどころが、実に面白い。とくに繰り返すようですが、中盤のサスペンスの高まりは最高です。それだけにアンファアの部分が悔やまれる。個人的には、大変優れた作品ではあるが、「大騒ぎするほどの傑作」ではないという印象です。むしろ、黄金期と言われる時代から現代ミステリへの橋渡し的作品として評価すべきでしょう。歴史的作品といってもいい。傑作、傑作と大騒ぎするのでなく、されげなく「結構、おもしろいよ」と進めるべき作品だと思います。華麗な文体とミステリアスな雰囲気(別に怪奇ムードがあるのでなく、アイリッシュの手にかかるとニューヨークがミステリアスな場にかかる)が全編を覆っており、おそらくミステリ好きでなくてもたのしめるでしょうし、パズル小説にしなかった(する気もなかった?)分、1940年代の作品なのにあまり古さを感じないと云う人も多いでしょう(もっとも、パズラー好きにとっては、一般的に古めかしいといわれそうなパズラーの型を愛しているのでそれを持ってパズラーを古めかしいとはいわない)・・それに推察するに、作者自身も傑作、傑作と持ち上げられることは、こそばゆいのでは・・・と想像します。この人は長編の構成力でいったら、一寸ぬるい。むしろ、本領は短編でしょね