ゼロ年代の想像力
作者 宇野常寛
価格 1,890 円
出版社名 早川書房
出版年月 2008/07/24
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■読者の評価     おすすめ度平均

んー       おすすめ度
「この十年、批評家たちはあまりにも怠惰だった」
とする割には従来の批評家の路線から一歩も踏み出してません。

結局のところ、「政治と文学の問題をどうするか」というトラディショナルすぎる問いに(あえて?)真正面から答えているだけです。

政治には対しては「勝った者がルールを決める社会」からその排他的暴力性を取り除く法システムや管理システムの醸成を提唱してますが、これは宮台、東はもちろん西研とか仲正昌樹とかも結構前から言ってることです。

肝心の文学にしても同様。個人の尊厳は引きこもっていても保障されない、だから違う世界を生きる友達や恋人をつくれ、という話は(著者も自覚しているが)モロに宮台の路線。
宮台の言葉がそれを必要とする人たちには届かない、っていうのと同様、著者の言葉は支持者の中のみで共有される、それこそ引きこもり的言説です。

宮台的な政治関与(エリート養成)の立ち位置から、ポップカルチャーの援用で「外に出ろ」って言われてもただ高圧的なだけでなんらアクチュアルではない気がします。

批評界の不毛さをわかりやすく噛み砕いて見せてくれた、という意味では良書かも知れません。


この10年誰も書かなかったし、書けなかった本       おすすめ度
フランス現代思想の研究者兼サブ・カルチャー評論家である東浩紀と、あの宮台真司をもっとも的確に理解し、批評の世界において、両者の理論の批判的継承者となりつつある著者のデビュー作が本書である。

90〜00年代の文化現象について、ここまで的確に解説した本と批評家は、なんのかんのいって、他には存在していない。
内容を要約すると、いわゆるシンプルな社会反映論である。
この約10年間の社会の変化は、物語にどのように影響を及ぼしたのか?そして、いま、何がアクチュアルなのか?

ひとつの作品、一人の作家にこだわるのではなく、著者のアンテナに引っかかった、もしくは、世間で話題になっている作品を、ジャンル横断的にとりあげ、一見バラバラに見えるそれらの作品のテーマが実は似通っていることを指摘するという、数で勝負というか、ある意味統計的な批評スタイルは相当ユニークである。
荒いところも多いが、すくなくとも、こんな本は、この10年誰も書かなかったし、書けなかった。
そういう意味で本書は貴重といっていいだろう。

また「友達をつくれ」という、ある意味素朴に感じられる本書の結論は、もちろん「比喩」ではあるが、それと同時に実存の問題を、世界の問題にすりかえて、難渋に語ってみせる、自意識過多なぷちインテリたちに向けられた「実戦的アドバイス」でもある。

なんとなく知的で繊細そうな文体で書かれているものが批評であり、それを好むのが読書人なのだという、批評の一般的イメージを裏切る、著者の断定的かつアグレッシブな物言いと、偽悪的態度は多くの物議をかもしだしているが、しかし、肯定するにしろ、否定するにしろ、無視したフリをするにしろ、本書が昨今のサブ・カルチャー批評の流れを変えた一作であることは間違いない。


読む価値、微妙       おすすめ度
 ちょっと話題になっているので読んでみた。初めてなので定価で買う勇気はなかったが、ちゃんと図書館にあった。
 内容は、今までこういう論争があることさえ知らなかった小説読みとしては、お恥ずかしいが、一読ではわからなかった。というか、行間を読み取らなければならないものと思っていたのが、そのとおり読めばいいわけね。結論は、現代人はだれもファミレスからは逃れられないってこと?そんなテーマで人と熱く喧嘩をする必要があるのだろーか。
 あとね、ヒッキーはみんなエロゲーしていると決めつけておられるが、そうとも限らないんじゃないか。若者をわかっていそうでわかっていなさそうなところが実に微妙である。
 それにしても、図書館さん、苦しい財政の中でのやりくり大変なんだから、もうちょっとましな本を入れようよ。私は助かったけど。 


分析は的確だけど・・       おすすめ度
95年から00年以降の時代に対する著者の分析には、堅実というか頷けるものがありました。
しかし家父長的、男性的価値観を「レイプファンタジー」といったレッテルで断ずるように、作品の是非に対する姿勢にはやや一方的な感じがします。
また著者は社会、歴史による個人の認証(平たく言えば社会に認められる=成長)、や父性の復権といった価値観を旧来のものとして、それらを主張する作品に対して、商業的な失敗を以てこれを批判している様に見受けられますが、そうした批判自体「社会的価値観(この場合市場原理)」による「家父長的」な断定なのではないでしょうか?

時代に迎合しない価値観を一種のマイノリティ、とでも言うなら、流れに沿うかどうかで是非論を主張する著者の姿勢に、私は馴染めないものを感じました。


「オタク論壇プロレス」をプロデュース       おすすめ度
まあ、とにかく鼻息が荒い。

東浩紀をはじめ、ほうぼうにケンカを吹っかけていく「芸風」は、これまでの
オタク業界にはちょっといなかったキャラで、見てるぶんにはなかなか楽しい。


ただ、本の内容は正直ショボイ。

著者が学生時代に私淑していたという宮台真司的な二元論文体で、自分にとって
「良いもん」「悪いもん」を仕分けていく手際は、見通しをよくする反面、大雑把で恣意的。
ジャンル意識や表現論への視点も乏しく、テーマ論に終始しているのも底が浅い。

あと、意外と潔癖でモラリストであるのにも驚かされる。
著者の主張を一言でいえば、

「ひきこもりでエロゲーばっかやっているオタクは、さっさとお外に出て友達と遊びなさい」

ということになるのだろうが、最先端を標榜する評論家の言が、結果的に
そのへんの学校の教師の物言いと変わりなくなるというのも時代の皮肉か。


まあ、エロゲーや〈セカイ系〉の擁護者(と著者が見なしている)である東浩紀のアンチという立場で登場したため、
道学者的立場を取らざるを得ないのだろうが、言わずもがなな「常識」を得意げに振りかざしているのは結構サブい。


無自覚で無防備な天然くんなのか、はたまた計算高い確信犯なのか――。


どちらにしても、著者がこれからどうオタク論壇をサバイブしていく
かには 興味があるので、がんばって「プロレス」してください。