片想い
作者 東野 圭吾
価格 1,800 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2001/03
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???大学時代のアメフト部のメンバーとの定例の飲み会の後、哲郎は10年ぶりに会った元マネージャーの美月にある秘密を告白される。そして、その秘密は思いもかけない形でメンバーに影響を与えていく…。導入部分から読み手をぐいぐい引っ張り込み、途中で急に視点が変わるストーリー展開は、日常的な場面から少し現実離れした設定へと読者を取り込んでいく東野圭吾の得意技。そして、なにげない描写に隠された伏線が予期せぬエンディングへと結びついていく。アメリカンフットボールのポジションの役割を簡単にでも把握しておくとさらに楽しめるに違いない。

???学園モノ、刑事モノ、サスペンス、パロディ、本格推理と発表するごとに作風が変化する東野圭吾作品は素材にも工夫が凝らされており、『変身』では「脳移植」、『パラレルワールド・ラブストーリー』では「記憶」、そして本書では「性同一性障害」と常に新しい事柄を題材に取り入れ続けている。


???文中でこう語られているように、本作品ではトランスジェンダー、半陰陽、同性愛と、「性差」に苦しむ人々への理解も示している。だが、「性同一性障害」など「性差」の問題が中心だったストーリーが、徐々に謎解きそして過ぎ去りし大学時代と目の前の現実とのはざまに揺れ動くオトコたちの心の動きへと移行していき、それとともに著者の「性差」への認識があいまいになって示されていく。それが、おもしろみを保ったまま終結するストーリーに小さな影を落としてしまっている。

???文字だけのシンプルなカバーをめくると、作品のテーマに通ずる絵が施されている。読んでから見るか、見てから読むか。それによって、作品の読み方も変わってくることだろう。(つちだみき)



■読者の評価     おすすめ度平均

すごいと思った       おすすめ度
東野圭吾の本を、読んでみたかった。
お勧めの作家でよく目にする作家さんだったから。

読み終わって、すごいって感心した。
こんな長編を、きちんと書くってことがすごい。
緻密な構成、絡み合った人間関係。
最初のほうに出てきた伏線が最後で明らかになる。
そこに持ってくまでの展開。
中盤に差し掛かったところで新たな展開。
どれもすごいとおもう。

私的には2時間のサスペンス劇場を見てる気分だったけど。

性同一性障害・・・
すごく難しい話だと思った。
「受け入れられたいという我々の思いは、
 たぶんこれからも伝わらない。
 片想いはこれからも続くでしょう。」
ちょうど、中間あたりで出てくる科白。
きっと、苦しんでいる人はたくさんいるんだろうなと思った。

ハードカバーでもこんなに分厚いんだから文庫本にしたら・・・
それでも、最後まで飽きずにあっという間に読んでしまった。
後半に差し掛かったとこで
主人公が15分か20分の間に人の部屋の中からあるものを探さなきゃいけない場面がある。
部屋の持ち主が帰ってくるまで15〜20分ってこと。
気がついたら、こっちまで焦って急いで読んでた。
そして、何も私まで急いで読むことないって気がついて戻ってまた読み直した。
それくらい、話の中に入ってた。


読ませますねぇ       おすすめ度
 殺人事件と、性同一性障害の登場人物をとおして性別・性差を絡ませて物語は進んでいきます。
 難しい主題と軽快な物語の展開が魅力の作品になっています。
 それにしても、この作家の書く登場人物は、いつもよく書き込まれていて、生き生きしていますねぇ。
だから会話のテンポも良くて一気に読めてしまいます。
 主人公夫婦の互いの距離感も結構リアルで・・・
 どの作品をとっても水準以上を確実にクリアする作者に感心するばかりです。

 



心に残りすぎ       おすすめ度
結構分厚かったが、一気に読み終えてしまった。東野さんの作品は、ただ謎を解き話を進めていくだけでなく、何か考えさせるようなものがある。今回は性同一性障害というもの。しかも、男として、女として、そういう枠だけでは収まらなくなってくる、本人たちにもよく分からない「複雑な気持ちの部分」がよく描かれていた。東野さんの本を読んだ後は、いつも東野ワールドから抜け出せず、眠れなくなってしまう。もう東野さんの作品を読むのが怖い気もする。


説得力のある性       おすすめ度
東野さんの作品はどれも好きなのですが、この作品は特に好きです。
物語としては推理サスペンスに属するのでしょうか?しかしそうは思わせない進行がとても心地良いです。何十にも重ねられた仕掛け、だけど文章自体がとっても分かり易いので読むのが遅い僕にはとても助かりました。

この本で取り上げられているのは性同一性障害。それを理解していると思っていた僕は、自分の浅い知識と、本人達の強い悩みに愕然とさせられました。
東野さんの語る性はどれも説得力があります。



自分の性別に苦しむ全ての人へ       おすすめ度
性同一性障害の人間達の苦悩と彼ら、彼女らがどのように生活しているか、そしてその中で体は女性で心が男性の美月が殺人事件に関わり、それに伴って周りの人間がどう反応したか。それまで全く男女の性差を考えていなかった主人公哲郎がこの事件と大きく関わるにつれそれまで社会の明るみに出てこなかった部分を暴き立てていく。

初めて読んだ時は「やっと世の中にこういう形の推理小説が出てきた」と万感の思いで一杯でした。東野圭吾は読ませる小説を書くのが実に上手い作家です。最初から内用に引きずり込まれていきます。特に戸籍交換システムの辺りは実際に社会に適応されたとして本当に警察沙汰にならないのかと考えさせられました。このレビューで興味の持った方は是非一読して下さい。
実際に社!会全体の若い年齢層が中性と化しているそうです。一昔前の男は男らしく、女は女らしく、そんな形も崩れてきています。色々とジェンダーフリーと言われている世の中ですが、本当に自分らしくあるには、本当の自分とは。そんな問いに襲われました。スケールの大きさに圧巻され、この作者の技能と度量を見せられました。