夏の名残りの薔薇
作者 恩田 陸
価格 1,950 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2004/09/25
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■読者の評価     おすすめ度平均

人の記憶と妄想と現実と       おすすめ度
恩田陸は非常にオマージュが好きな作家だが、今作ほど強烈に、大胆に取り入れた作品は無い。ふんだんに「元」が引用されている。

アラン・レネ監督映画『去年マリエンバートで』が今作のオマージュ元で、引用文が繰り返し繰り返し本文に登場する。

さて、この小説は「人の記憶、妄想と現実」がテーマであると思われる。各章毎に殺人事件が起こるのだが、次の章では記憶がキャンセルされ前章で死んだ人物は蘇っている、というような表現がなされる。

しかし…これは記憶が違っているのか、忘れているのか、現実なのか、妄想なのか。そういう境が曖昧になって…

ところで、この小説は各章を「第〜変奏」としているが、上手いなぁと何章か進んで思った。変奏曲とは主題といくつかの変奏からなる楽曲の事で、今作では基盤となる主題を用意し、各変奏で内容を変えていく、という風に表現している。

これを見ると最新作「中庭の出来事」(06年12月)にも近いものがあり、あちらの方がより込み入っていて年月を感じた。まあ、今作は「登場人物の記憶〜」がテーマで、あちらは「読者の記憶」にテーマが置かれているのだろうから、作風を含めて受け取り方は全く違うのだが。

「自分の幸運を享受しつつも、心のどこかでそのことに物足りなさを感じることがある。そう感じること自体、傲慢で贅沢なことだと承知しつつも、人間とはそういう生き物なのだから仕方がない。」 本文128ページより


夏の名残の       おすすめ度
映画をモチーフに用いた作品はこれまでも数作みられました。
本来この手法は半端に映画のイメージに引きずられるので不得手なのですが、今回あまりに大胆な挿入でかえって目につきませんでした。
出版当時はタイトルと装丁が印象的ではあるものの特別引っ掛かるものはありませんでしたが、今回改めて振り返ると意外なことに数ある恩田作品のなかでも興奮してしまう部類に入ってきてしまいました。
秋のホテル、サロンでの読めない会話、二転三転する事実。
目の眩むような秋に読む美しい小説です。


現実は地味なお話なのに・・・       おすすめ度
それぞれの章の語り手が辿る悪夢のパラレルワールドが交錯する中、少しずついろんな真相が明らかにされてゆきます。
しかしそれもまた夢なのか現実なのか・・
でも脈々と本筋を辿るものは確かにあり(と私は思ったのですが・・)、構成力の素晴らしさが印象に残る作品。
推理小説という側面もあると思うけど(実際、本格推理小説を念頭に書かれたということです)、私としては、恩田さんの魅力でもある、舞台設定の面白さ、人物たちのシビアな相関図、雰囲気作りの巧みさ、が奏でるめくるめく恩田ワールドを堪能したという感じです。


なぁんだ。       おすすめ度
恩田陸の本格ミステリ(少ないが)の中では、一番の出来ではないだろうか。
題名と話もちゃんと繋がってる。
いかにも恩田陸が好きそうな設定で、絢爛豪華。
何回も何回も前のページへ行ってしまったが、最後はすっきりした。


「反モラル」がテーマ??       おすすめ度
まず、表題と内容の不一致。

内容も、引用の仕方が難解だった。

モラルも含めて、後味の悪い作品。
構成は面白かったが・・・。

これまで読んだ恩田作品の中では一番がっかりしてしまった。