風に舞いあがるビニールシート
作者 森 絵都
価格 1,470 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2006/05
Amazonの詳細ページへ
    第135回 直木賞   受賞
国連で難民事業に携わる里佳は、上司で元夫のエドがアフガンで死んだという知らせを受ける。そして、エドがアフガンで助けた少女のことを伝え聞き-。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

主人公たちのこれからが、幸多きものでありますように☆       おすすめ度
器や仏像、古典、UNCHER…といった
幅広い分野を題材にした6つの短編集。

それぞれの作品で描かれているのは、
「大切なもの」のために懸命に生きる人たち。

それを守るために何かを犠牲にしなくてはいけなかったり、
辛い思いをする時だってあり、
その価値は誰にでも理解してもらえるものではないため、
バカにされたり疎まれることも。

でも、「大切なもの」があるからこそ、
主人公たちは強くなれたり、幸せを感じることができています。
勝ち組・負け組といった言葉をはじめ、
人を判断する物差しがたくさんある世の中ですが、
その人にしかわからないことも、確かに存在するのではないでしょうか!?

自分にとって、譲れないものは何だろう***

「自分だけの価値観を守って、
 お金よりも大事なものを持って生きている***。
 あたたかくて強くて、生きる力を与えてくれる、
 森絵都の短編世界。」との紹介文が帯に書いてありましたが、
うんうん、って思わず納得。

「できるわよ。だって今までやってきたんだもの。
 不器用でムダにこまめで見当外れでも、
 実直に、粘り強くがんばってきたじゃない。
 あなたならこれからもがんばれる。」っていう文中の言葉に、
思わずジーンってなっちゃいました。

6編の物語とも、
最後には未来に開けて終わっています。

主人公たちのこれからが、幸多きものでありますように☆


著者の生涯最高の短編になると思います       おすすめ度
米国の裕福な家庭で人肌のぬくもりを知らずに育ち、資本主義社会が生み出した闇(難民)への贖罪を背負いUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のフィールドワークに全てを捧げる男とのささやかな家庭を夢見破れた、勝ち組みだったはずのキャリア女性の、出会い、結婚生活、離婚、永遠の別れ、そして再生が深い奥行と絶妙な伏線を伴い描かれています。

本書収録の他の短編と少女の成長物語であった「アーモンド入りチョコレートのワルツ」と「永遠の出口」を2年前に読んだだけでの直感ですが、小説の奥行(男女が背負う業の描写、物語の持つ社会批判性、結婚・離婚・愛への洞察)を考えた時、これ以上の短編をこの著者は描き得ないと思います。

本書が第135回の直木賞に選ばれた当時、地下鉄南北線の車内広告で見た「愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々ばかりを、気がつくと今日も思っている」という本文からの引用が、今もこの物語のエッセンスを一番上手く抽出しているのではないでしょうか。

そして、再生が本書のメインテーマなら、「愛しぬけなかった離婚相手をその死後に初めて愛しぬくことができるか」という命題が再生に繋がる裏のテーマにある気がします。資本主義社会の不条理と後ろ髪引かれる離婚に少なからず心が囚われている人には特別感じ入るところがあるかも知れません。


ミステリーのような。       おすすめ度
どの短編も、登場人物達が謎めいており、一息で読んでしまいました。特に好きなのは「器を探して」。主人公の印象が、最初と最後じゃ全然違って私にはちょっとしたホラーでした。「風に舞いあがるビニールシート」は主人公の心情に素直に添えて、最後の決断は予定調和に見えつつ納得できるものでした。ちなみに、風に舞いあがる青いビニールシートは、私には阪神大震災後の風景の一部です。予期せぬ不運と不幸と、弱者の象徴です。


日常の中で作られるストーリーが共感を呼ぶ       おすすめ度
表題作は国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)に勤める外国人の夫と同僚の元妻の物語。夫は殉職的な死を遂げてしまうが、既に離婚している夫の死に対する妻の複雑な心境が見事に描かれており、読み手に共感を与える。


瑞々しい感性で心の機微を描いた珠玉の短編集       おすすめ度
 どうしても譲れない心の拠り所が現実とは折り合わずに葛藤する。そのような心の機微、男女の綾を怜悧な観察力と豊かな表現力で描き、ハッとさせられることが多かった。
 表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は中でも秀逸で、愛することの難しさ、せつなさが見事に描かれている。
 以前から著者の掲載小説を読んでいたが、この本で森絵都ファンになった。