サマーバケーションEP
作者 古川 日出男
価格 1,800 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2007/03
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■読者の評価     おすすめ度平均

忘れられない夏休み       おすすめ度
夏。井の頭公園の湧き水から、神田川へ。そして海までの冒険。
主人公の僕とウナさんの出会いは偶然。カネコさんが、加わる。
僕たちの冒険は、小さな水の流れが合わさるようにして始まった。
小さな流れが川になり、川が幾本も合流したり、また分岐したりするように、
僕たちは、出会う人たちが海までの冒険に加わると言えば行動をともにする。
イギリス人男性と日本人の女の子のカップルも、小学生の男子3人組も加わる。
離婚して息子に会わせてもらえない謎めいたおじさんも、中国人の双子の姉妹も加わる。
会話は、硬質な感じで、僕という人のある特性から、ぎこちないくらいの単語が
並んだりする。それでも、独特のリズムで人とコミュニケーションするようすが、
実に印象的。僕といっしょに歩く人たちは、するりと僕を受けいれる。
劇的なことはなにも起こらない。けれど、神田川から隅田川へ。そして海へ、と
知らない者どうしがひとつの川のようになって歩いている、そのこと自体が
ほとんど奇跡のようなできごとだと思える。
途中で、別れていく人たちもいた。自分の冒険はここまでと、区切りをつけて。
おもしろい中学生グループと助け合う一幕もあった。
謎めいたおじさんが、とてもいいタイミングでみんなをバックアップしたり、
イギリス人といっしょにいた女の子が、「絶対に忘れない」と書き残して
くれたり……。
偶然の出会いが、すべてつながっていく不思議。人と人は、こんなにも
受けいれられる懐があるのだと、あたたかな気持ちにさせられた。
忘れられない夏の冒険。読んでいる間じゅう、登場人物たちのピュアな
心の動きに魅了され、愉しい時間を過ごした。


読み終わるのがもったいない。       おすすめ度
読むのが楽しくて、それでも読み終わってしまうのがもったいないような気持ちになったのは久しぶりです。自分の良く見知った場所ばかりで、情景が浮かびやすいというのもあったかもしれません。それにしても、どうして人はこんなにも水辺に引きつけられるのでしょうか。夏の陽を受けて、ゆっくりと流れる神田川を一緒に眺めて、また商店街や川縁を自転車で疾走するその風を一緒に感じて、いつまでもこんな夏休みを過ごしたいと思いました。