|
|
|||||||||||
|
||||||||||||
|
|
||||||||||||
■読者の評価
おすすめ度平均
スーパークリエイターの描いた天平時代 おすすめ度
奈良の東大寺、正倉院御物の献物リストの最後に大納言藤原仲麻呂を始めとする5人の役人の署名が連なっている。その末尾に小さく控え目な署名を残している葛木連戸主が本書の主人公である。この主人公戸主(へぬし)が遭遇する事件は、東大寺大仏の建立に始まり、正倉院御物の奉納、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱、宇佐八幡の御神託(道鏡の野心と和気清麻呂)と続く。女帝、孝謙天皇(後に重祚して称徳天皇)の御世である。そしてその女帝の揺らいでやまない女心も著者の凝視を逃れていない。
この評者は時代小説という名の捏造された歴史なぞは読むまでもないという信念を持っている。それでいながらなお本書に手を染めたのは「正倉院展」なるものを見学したという偶然に発している。そしてたちまち本書の構成の巧みさ、さらには良くも悪くも偉大な登場人物たちの秘密の世界にぐんぐんと引き込まれてしまった。
私が経験したこの楽しさは子供のころに漫画を読んだ時の楽しさに通じるものだった。子供であっても漫画の世界は現実ではないことを知っている。子供は無心無我の境地で文字に助けられながら絵を楽しんでいる。私はもはや子供ではないから、本書が築き上げる歴史的枠組は果たしてどこまで史実なのだろうかと考える。戯画化された登場人物はどこまで歴史上の人物に接近しているかも気になる。重箱の隅をつつくことはしていないが自分の知識だけでどこかに破綻を見つけられないだろうか。そしてその試みに見事に失敗した。
著者の経歴が秀逸で、「次世代執筆ツール『紙のキーボード』の開発」で経産省から「スーパークリエイター」の認証を受けている。すっかり次元の異なる物語りの世界でもこの作家は正にスーパークリエイターであることを証明したのである。
この評者は時代小説という名の捏造された歴史なぞは読むまでもないという信念を持っている。それでいながらなお本書に手を染めたのは「正倉院展」なるものを見学したという偶然に発している。そしてたちまち本書の構成の巧みさ、さらには良くも悪くも偉大な登場人物たちの秘密の世界にぐんぐんと引き込まれてしまった。
私が経験したこの楽しさは子供のころに漫画を読んだ時の楽しさに通じるものだった。子供であっても漫画の世界は現実ではないことを知っている。子供は無心無我の境地で文字に助けられながら絵を楽しんでいる。私はもはや子供ではないから、本書が築き上げる歴史的枠組は果たしてどこまで史実なのだろうかと考える。戯画化された登場人物はどこまで歴史上の人物に接近しているかも気になる。重箱の隅をつつくことはしていないが自分の知識だけでどこかに破綻を見つけられないだろうか。そしてその試みに見事に失敗した。
著者の経歴が秀逸で、「次世代執筆ツール『紙のキーボード』の開発」で経産省から「スーパークリエイター」の認証を受けている。すっかり次元の異なる物語りの世界でもこの作家は正にスーパークリエイターであることを証明したのである。
憂国の士を描いたユーモアファンタジー おすすめ度
本作品は『われはフランソワ』(新潮社)や『瑠璃の翼』(文藝春秋)などで
発揮された手法、すなわち綿密なリサーチのもとに存在した人物を氏の視点から脱構築し、
見事に虚構化している。
その世界には日本古来にあるモノノケと付喪神の世界が展開され、
山之口流の日本史解釈プラスユーモアミステリとして面白おかしく読める。
本書は、日本の歴史正史や歴史的事実のみで
いまいち親近感のない名前だけの実体のない人々が、
山之口氏の素晴らしい肉づけによってよみがえり、
まさに映画を見ているような感覚で読むことができる物語だ。
日本版聊齋志異といっても過言ではない。
さらにこの天平冥所図会はただのユーモアミステリではない。
皇室を舞台にした憂国の士を描いた物語でもある。
現在日本は、長期的な視野によって善悪を判断する役人も減り、
権力者や既存権力に媚びへつらう人々が跋扈し、
自らの保身に回っている現状である。
この作品はそのような日本の現状を痛烈に批判しつつ、
自らの信念のもと、守るべきものを持った人々を描いた物語でもある。
ぜひご一読あれ!
発揮された手法、すなわち綿密なリサーチのもとに存在した人物を氏の視点から脱構築し、
見事に虚構化している。
その世界には日本古来にあるモノノケと付喪神の世界が展開され、
山之口流の日本史解釈プラスユーモアミステリとして面白おかしく読める。
本書は、日本の歴史正史や歴史的事実のみで
いまいち親近感のない名前だけの実体のない人々が、
山之口氏の素晴らしい肉づけによってよみがえり、
まさに映画を見ているような感覚で読むことができる物語だ。
日本版聊齋志異といっても過言ではない。
さらにこの天平冥所図会はただのユーモアミステリではない。
皇室を舞台にした憂国の士を描いた物語でもある。
現在日本は、長期的な視野によって善悪を判断する役人も減り、
権力者や既存権力に媚びへつらう人々が跋扈し、
自らの保身に回っている現状である。
この作品はそのような日本の現状を痛烈に批判しつつ、
自らの信念のもと、守るべきものを持った人々を描いた物語でもある。
ぜひご一読あれ!
日本史に疎くても大丈夫 おすすめ度
パッと見、タイトルから何やら生真面目で重い歴史小説のように思えてしまいましたが、どっこい。歴史的な事件を、どこかほのぼのとした冥界観と結びつけた、謳い文句通りの「爽快でポップなファンタジー」でした。普段ほとんど小説を読まない私ですが、一気に読み進めてしまいました。純粋にエンターテイメントとしておすすめです。日本史に造詣が深い方でしたらより一層面白く(よりはっきりしたイメージを持って?)読めるのかもしれません。
それにしてもこの1冊の中に、創造的中道(処世術?)から生きることの意味まで、本当に様々なエッセンスがさりげなく詰め込まれていて、前向きな思索にふけってしまいました。個人的には、すっと消え入るような心にしみるエンディングがポイント高し。
それにしてもこの1冊の中に、創造的中道(処世術?)から生きることの意味まで、本当に様々なエッセンスがさりげなく詰め込まれていて、前向きな思索にふけってしまいました。個人的には、すっと消え入るような心にしみるエンディングがポイント高し。
リアルなファンタジー おすすめ度
日本史に関しては、残念ながら忘却のかなた‥な部分が多く、わが知性のなさが悔やまれます。出てくる登場人物、確かに、日本史資料集の何ページかの左上に系図があったんだよなー、ええっと、仲麻呂は確か、乱を起こしてる。その後実権誰だっけ?道鏡と天皇のスキャンダルは有名だよなーとか、頭振り絞って読みました。後で必ず資料集チェックしよっと。
たまたま奈良県に住んでいたことあるので、地名、お寺の名前に懐かしさも感じられて、ファンタジーをリアルに楽しめました。
たまたま奈良県に住んでいたことあるので、地名、お寺の名前に懐かしさも感じられて、ファンタジーをリアルに楽しめました。
天平時代早分かりファンタジー おすすめ度
主人公をはじめとして実在の人物や事件を題材にしていますが、怨霊や神様もばんばん出てくるポップな「天平時代早分かりファンタジー」。
読んでからWikipediaなどで天平時代を調べると、人物や事件のイメージが明確になってすんなり頭に入るというオマケつき。
高校時代、日本史を勉強してるときに出会いたかったと思いました。
第2話の「正倉院」は、後に正倉院に納められることになる聖武天皇ゆかりの品の奉献目録作成プロジェクトのリーダーとなった主人公・戸主の奮戦記。
素晴らしく面白かった! 天平時代の『プロジェクトX』です。
上司はプロジェクトを出世に利用しようとし、上司のライバルは妨害工作に走り、仕様変更は入り、期日は迫る、人材は足りない、プロジェクトメンバーは疲労困憊、まさに「デスマーチ」。そして悲劇はおこる。
士気は低下、さらにクライアントである天皇家内部の確執からプロジェクトの中止さえ危ぶまれ……。
主人公はこの危機をどう乗り越えるのか!
――というお話。『プロジェクトX』だけどファンタジー。
読み終えると、正倉院関係の資料を見る目が変わります。
読んでからWikipediaなどで天平時代を調べると、人物や事件のイメージが明確になってすんなり頭に入るというオマケつき。
高校時代、日本史を勉強してるときに出会いたかったと思いました。
第2話の「正倉院」は、後に正倉院に納められることになる聖武天皇ゆかりの品の奉献目録作成プロジェクトのリーダーとなった主人公・戸主の奮戦記。
素晴らしく面白かった! 天平時代の『プロジェクトX』です。
上司はプロジェクトを出世に利用しようとし、上司のライバルは妨害工作に走り、仕様変更は入り、期日は迫る、人材は足りない、プロジェクトメンバーは疲労困憊、まさに「デスマーチ」。そして悲劇はおこる。
士気は低下、さらにクライアントである天皇家内部の確執からプロジェクトの中止さえ危ぶまれ……。
主人公はこの危機をどう乗り越えるのか!
――というお話。『プロジェクトX』だけどファンタジー。
読み終えると、正倉院関係の資料を見る目が変わります。

