私の男
作者 桜庭 一樹
価格 1,550 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2007/10/30
Amazonの詳細ページへ
    第138回 直木賞   受賞
    本屋大賞 2008年   受賞
お父さんからは夜の匂いがした。狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

音が消えていく本       おすすめ度
電車の中で読んでいたのですが、
物語の中に『音』というものを感じませんでした。

人々の鼓動、呼吸、街の喧騒・・
そういったものが一切聞こえてこないストーリーです。

それも、第1章から6章を読み続けていくにつれて、
音がどんどんなくなっていきます。

ただその中にあるのは、花と淳吾のみ。
本の中で動いているという事実のみ。

彼ら感情も感じないし、彼らの温かみも感じない。
それは、花と淳吾だけで感じているからかもしれません。
読み手には絶対感じさせない何かが、彼ら二人にはあるように思いました。

同じくして、自分の周りの音も消えてなくなります。

それぐらい引き込まれていました。


小説は価値観を知る機会。       おすすめ度
直木賞受賞ということで、FIGAROにも紹介されていたので、読みました。
だいたいの設定は事前にわたっていたものの、読んでて驚愕しました。

こういう愛の形は、わりとフィクションでは聞きますが、この小説の中では、その
事実が衝撃なのではなく、その心理が驚愕なのではないでしょうか。
読むうちに当事者の心理が理解できて、
なるほど。と思った。自分の中にそういう価値観がないだけで、実際にはこういう人達も存在し得ると思う。
小説は自分の知らない考え方、思考回路を知るいい機会だと思います。
考え方の可能性の広さを実感。

日本人は、一定のものの考え方をするように教育等がなされているけれど、
少数のマイノリティーの考え方を知ることも大事だと思う。

また、一線を越えるか、越えないか。という海、陸、犯罪。など
「境界」がテーマになっているのもおもしろい。

ただ、残念な点。
語り手と時代設定がかわる手法は数多くありますが、
9歳の花の観点でかかれたプロットは、
9歳がこんな発想しない。こんな熟語知ってるはずない。こんな感想は抱かない。
と違和感を感じました。所々、9歳を装っているものの、
作者の世代の視点で書かれたものにすぎなく、残念でした。
9歳の当時を振り返って、という設定なのでしょうか?

また読めば推測できるけど、はっきり断言しない事実もありました。
そういう書き方も、余韻が残る方法で、好きです。
きっと、淳治の父親も。。なんて想像します。

読書は想像力を養うものですね。


文学の皮をかぶった変態小説       おすすめ度
一言で言うと変態小説。
倫理上のあたりまえと主人公の父と娘のあたりまえ、後者を無くさないために繰り返される罪。
物語は結末から展開され、章を追うごとにすべての始まりへと逆再生で進んでゆきます。
読み進めるほどに解けてゆく父と娘の謎。
官能小説という言い方では安っぽいけど文学と表現するには賛否両論ある。
恋人にもなれず普通の親子にもなれず、父と娘の苦悩はひたすら陰鬱でもどかしく切ない。
ぼんやりとした後味の悪い結末が何とも言えない。

この本を気に入ったら(もしくは読む前に)同じ作者の前作『少女七竃と七人の可愛そう大人』も読んでみる事をお勧めします。似たような題材ですがこちらの方が入りやすいかと思います。


漫画的かな       おすすめ度
直木賞受賞ということで手にしてみた。
テーマとしては面白かった。父娘の愛と、男女の愛という、これでもかというまでに粘着質で濃厚な愛の物語。
成長後の花の感情描写などはリアリティがあって鬼気迫る感があった。
しかし!残念なことにストーリーに重みがなかった。このラブストーリーの味付け程度に色々な事件が起こるからだ。
二人のセックスシーンはすごく緻密でリアルな描写なのに、その他の描写にはリアリティがない。ついでに主人公花以外の人物の人間味が薄い、特に中高年男性の描写。災害で家族全員と死別した9歳の少女が直後からあんなに淡々としてるのは…文学というより漫画的なキャラクター設定だなと思ってしまった。家族が目前で死んだショックもそこそこに「この人がいればいい」って。この2人は二件もの殺人を犯しているのにまったく罪を暴かれない。ハネムーン後、淳吾失踪であわてて押入れの中を確認する花がいたけど、え!?ずっと入れてたの…?そして大塩さん無断で写真撮影?
とかとか、こういったディテールが小道具的に不自然に乗っかってきており、話に入り込めない…文学というか漫画に近い。竹宮恵子作の「風と木の詩」と似てるなぁ…と感じたからでもありますが。花と淳吾の関係はジルベールとオーギュのようだ。作者も女性ということで同漫画に影響されて、それゆえ文学的な面でリアリティに欠けるんじゃないかなーと思ってしまった。
というかんじで一部の感情描写のリアルさとストーリーラインのちぐはぐさで星2つです。


後味は、最悪       おすすめ度
だけど最後の1ページを読んだ後は純粋に面白いと感じた。

物語は近親相姦、殺人と二重の罪を犯した親子についてで、全体的にじっとりと暗く、それでいてどこか胡散臭いような雰囲気をまとっている。
個人的にダークな話が好きだからかもしれないが何より腐野淳悟に相当強い魅力を感じてやまない。

雨匂いがしてくたびれた風貌だが優雅な雰囲気を纏っている影のような男。 今までいろいろな作品を読んできたがここまで魅力を感じた登場人物は稀だ。すごく個人的な好みの問題だけれども。

だから「私の男」とまで言っていた花が最終的に淳悟ではなく美朗を選んだ理由がはっきりとわからない。そこまで美朗に魅力を感じられないし、むしろキャラ設定も曖昧でいまいちな気が。

だけど「おかぁさん」はどんびきだったな。
近親相姦、2人の絡みの場面はリアルで生々しく正直気持ち悪い。花だけに限らず女特有の欲深い、男に対する執念や執着は恐ろしいほどぞっとする。


こうゆう話は嫌いじゃないけど。
すごくねっとりしている、と表現するのが適切なのかもしれない。