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■読者の評価
おすすめ度平均
嫌悪すべき耽美的な世界 おすすめ度
正直言って作者がこの本で何を言いたいかよくわからない。いや、言いたい事なんてはじめからないのだ。作者はただ、筆で書くのも憚られるような恐るべき禁忌の世界をリアルに書いてみたかっただけなのだ。その意味ではこの小説はとても成功している。近親相姦小説は過去からいろいろとあるが、この作品はその中でもっともリアルなものに違いない。男女の、そして親子の、救いようのないどろどろの世界。それが恐るべきリアルさで描かれている。そしてこの作品を読んでしまった読者は、もう背徳の道に一歩踏み込んでしまっているのだ。社会によって刷り込まれた近親姦への嫌悪感、自分の中に刷り込まれた道徳律、それらが本当に正しかったのかと見直しを迫られる。それこそが作者の狙いではなかったろうか。
いや、やっぱり作者はただこの「世界」を描いてみたかっただけなのかもしれない…。
いや、やっぱり作者はただこの「世界」を描いてみたかっただけなのかもしれない…。
海に飲まれること おすすめ度
女の子は、誰かの娘、恋人、母親。
それを一度に経験する運命は、やっぱり異常なんだろうか。
子供、恋人、親に対する愛情は、海みたいに大きなひとつのもので
みちひきが境界線をあいまいにして、いろんな顔を見せながら、ときには凍った刃を他人に向けて、自分自身を飲み込むものなのかも
「誰かとずっといっしょに、どうしようもない生き方がしたい」
おんなじ海に、一緒にまるごと飲まれたとき、
お互いの愛情の境界線自体がわからなくなったとき
そんな生き方ができるのかもしれない。
冬の海のような おすすめ度
この本を読みながら、何度も鳥肌が立ちました。それは良い意味でのそれです。この本には恐怖も愛情も憎悪も殺意も慈しみも嫉妬も全てが詰まっていました。でも、読み終えると、暗い闇に隠された部分から全てが冬の冷たい海にさらわれたように心に溶け込んでしまって、まるで何か人生を見たような感覚に陥りました。実際には匂いも温度も何も感じないはずなのに、身体は凍えるように、反対に心は温かくなっていて、気味の悪さの中には色々なものが隠れている。そんな作品でした。著者が家族や愛を描く度に感じる冬の海のような感覚が強く息づいた作品だと、私は思いました。私の中で今まで読んだ作品の中でも首位に位置する作品です。
夢中で読了 おすすめ度
桜庭一樹さんが女性であることも、この本が直木賞受賞作品であることも
知らずに読みました。
ただ本の表紙がかっこいいなあ、きっとおしゃれな男女の恋愛小説なのだろう思って
選びました。
自分の知識の無さで、とんでもないテーマを描く小説を選んでしまったものの、
ページをめくるのがもう止められない、どんどん先へ先へと読み進めてしまいました。
桜庭さんの筆力が素晴らしいのですね。
夢中でページをめくってエンディングまで読ませるパワーに飲み込まれてしまいました。
不思議なのは、文中には「ぬめり」「湿気」「臭気」などモイスチャー度の高い
ワードが大判振る舞いされているにも関わらず、なぜか全体の印象は乾いています。
ごく個人的な感想ですが、「さらり」とした読みやすい仕上がりです。
この点が桜庭さんの魅力、実力でしょうね。
だからこういうテーマも選べるのでしょう。素晴らしいです。他の作品も読んでみたいと思いました。
ただこのようなテーマを選ばれる作家さんなら、読後の読者の心に「爪痕」を残してほしいなあ。
読み捨てられる作品では決してないですが、再読するほどでもなく、でもこんな素晴らしい文章を書くのに
おしいな、と思いました。
知らずに読みました。
ただ本の表紙がかっこいいなあ、きっとおしゃれな男女の恋愛小説なのだろう思って
選びました。
自分の知識の無さで、とんでもないテーマを描く小説を選んでしまったものの、
ページをめくるのがもう止められない、どんどん先へ先へと読み進めてしまいました。
桜庭さんの筆力が素晴らしいのですね。
夢中でページをめくってエンディングまで読ませるパワーに飲み込まれてしまいました。
不思議なのは、文中には「ぬめり」「湿気」「臭気」などモイスチャー度の高い
ワードが大判振る舞いされているにも関わらず、なぜか全体の印象は乾いています。
ごく個人的な感想ですが、「さらり」とした読みやすい仕上がりです。
この点が桜庭さんの魅力、実力でしょうね。
だからこういうテーマも選べるのでしょう。素晴らしいです。他の作品も読んでみたいと思いました。
ただこのようなテーマを選ばれる作家さんなら、読後の読者の心に「爪痕」を残してほしいなあ。
読み捨てられる作品では決してないですが、再読するほどでもなく、でもこんな素晴らしい文章を書くのに
おしいな、と思いました。
「お・・・」の謎 おすすめ度
2008年6月、OLの腐野花は結婚式を間近に控え、婚約相手の尾崎美郎の待つ
レストランへ向かっていた。雨の中、およそ新婦の父親としては似つかわしくない、
義父の淳吾と寄り添いながら…。
直木賞受賞作の本作が書いているのは、娘と父親の「血」をめぐるおよそ20年の
奇蹟だ。
序盤にてあらゆる「謎」が提出される。彼らは何から「逃げている」のか。そして、
結婚式直前の花の取り乱しが象徴するような、すこし度を超えた二人の親子仲
の理由はなにか。それらは親子というよりももっと、別の「間柄」で定義づけた方
が、すんなり納得できるような…。そういった謎が謎のまま提出される。
本作は、そんな淳吾と花の「現在」という帰結から二人の出会いまでを、複数の
登場人物の視点を借りて、時系列を遡りながら紐解いていく。ミステリーの構成
としては常道の部類に入るが、「たぶんそうだろうな」と予想がつきながらもつい
ついページのめくりが勇み足になってしまったのは、著者の描写力のたまものだ
ろうか。
一見無頼に書かれるこのひどい父親が、幼い花を引き取り、なぜに彼女だけに執
着したのかというのは奇妙にすら思えるが、その真相はすぐに思い当たる性的倒
錯(いわゆるロ×コン)ではなく、もう一ひねり加えられている。詳しくは本書をぜひ
読んでもらいたいところだが、そこには、何とも言えない地域共同体の粘っこい温
情と、それに相反するほどの「血」へのこだわりも、関係していく。"co-dependency"
というのは、まさにこういう関係のことを言うのだろう。
いろいろわかってからの話が冗長になっているという見る向きもあるかも知れない
が、それは作者が展開や結末だけで読者を引きつけようとしているのではなく、丹
念な描写で勝負しようとしていることの意思表示かも知れない。長くはあるが、十
分に読むに耐える。
レストランへ向かっていた。雨の中、およそ新婦の父親としては似つかわしくない、
義父の淳吾と寄り添いながら…。
直木賞受賞作の本作が書いているのは、娘と父親の「血」をめぐるおよそ20年の
奇蹟だ。
序盤にてあらゆる「謎」が提出される。彼らは何から「逃げている」のか。そして、
結婚式直前の花の取り乱しが象徴するような、すこし度を超えた二人の親子仲
の理由はなにか。それらは親子というよりももっと、別の「間柄」で定義づけた方
が、すんなり納得できるような…。そういった謎が謎のまま提出される。
本作は、そんな淳吾と花の「現在」という帰結から二人の出会いまでを、複数の
登場人物の視点を借りて、時系列を遡りながら紐解いていく。ミステリーの構成
としては常道の部類に入るが、「たぶんそうだろうな」と予想がつきながらもつい
ついページのめくりが勇み足になってしまったのは、著者の描写力のたまものだ
ろうか。
一見無頼に書かれるこのひどい父親が、幼い花を引き取り、なぜに彼女だけに執
着したのかというのは奇妙にすら思えるが、その真相はすぐに思い当たる性的倒
錯(いわゆるロ×コン)ではなく、もう一ひねり加えられている。詳しくは本書をぜひ
読んでもらいたいところだが、そこには、何とも言えない地域共同体の粘っこい温
情と、それに相反するほどの「血」へのこだわりも、関係していく。"co-dependency"
というのは、まさにこういう関係のことを言うのだろう。
いろいろわかってからの話が冗長になっているという見る向きもあるかも知れない
が、それは作者が展開や結末だけで読者を引きつけようとしているのではなく、丹
念な描写で勝負しようとしていることの意思表示かも知れない。長くはあるが、十
分に読むに耐える。

