ニュークリア・エイジ (文春文庫)
作者 ティム オブライエン   Tim O'Brien
価格 900 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 1994/05
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■読者の評価     おすすめ度平均

ニュークリアエイジ       おすすめ度
村上春樹大好き私は、勿論村上春樹が翻訳する本もよんでしまいます。おかげさまで、色んなアメリカ作家も読むことになりました。ジョンアービんグ、フィッツジェラルド、トルーマンカポーティ、春樹が翻訳していない本も読み出しました。でもこの作品が一番いいです。とにかく、読んでみて下さい。何もかもが満たされた時代であるからこそなんとなく感じてしまう時代の喪失感。不安感。現代人であるからこそわかりあえるなぜかここにも春樹ワールドが。世界中の全ての春樹ファンに。


I want to be wanted!       おすすめ度
とても賢明とは思えない方法で主人公が生き抜こうとする姿に、不思議なほど心打たれ、読者の私が理解に苦しもうとも、彼なりの方法を、彼が信じたんならと、応援して励ましたくなってしまう、そんな感覚が読み通すあいだありました。
ヴェトナム戦争や核戦争の予感などよりは、ひとつの「愛」の話として私は読みました。
Tim O'Brienの人物描写はとても好きなんですが、今回の私のお気に入りは、サラとチャック・アンダーソンでした。

英語も比較的読みやすく、感情移入ではなく、自分もまた登場人物の中に入り込んで彼らの息遣いの感じる距離で読んでいるような不思議な感じでした。これは一体何なんだろう?心に残る作品であることは間違いないです。



真剣さを笑うことなどできはしない。       おすすめ度
夢中になって読みました。
村上春樹も解説に書いていましたが、この物語の誰にも強く感情移入することができないのにも関わらず、
途中からだんだん主人公に対して、
「がんばれ、そう、それでいい、がんばれ」と励まし称えたくなる、
不思議な感情が生まれます。
穴を掘り続けるその懸命さを、不安を、真剣さを、
笑うことなどとてもできはしない。


本気で生きる事。       おすすめ度
純文学の力って何だろう、などと青臭い事をいい歳をしてふと考えてしまう。一気に結論を言えば、その唯一の拠所は読み手の「今・ここ」を揺さぶる力、なのかも知れない。本作は、いわゆる小説の完成度が最高というわけではない。もっと構成をひねり、テンポを変えた方がよいと思える部分も多々ある。しかし、この根底に込められた”生きる事への真剣さ”は並大抵のものではなく、その想いは完成度を凌駕する。憑かれたように穴を掘り続ける男の想いは、余りにパワフルかつ痛切に読み手に叩きつけられる。「反戦」「ベトナム戦争」「核保有国のメタファー」らの歴史・人文学的な解釈はいくらでも可能だろうが、僕はこの本にとってそれらは二次的でいいと思う。とことんまで自分や世界を見つめ、その中で、絶対に真剣に幸福を目指そうとした魂の輝き。この小説の底力は、すべての時代や状況を超えた普遍の地平へと我々を豪腕で導く。


終わりのない不安感       おすすめ度
1995年、ウラニウムの鉱山を売却し巨万の富を得た主人公ウィリアムは、核戦争への恐怖から庭にシェルターとなる穴を掘り続けている。が、妻ボビと娘メリンダは、まったく理解を示さない。それに先立つこと30年、ヴェトナム戦争の時代、ウィリアムは大学で「爆弾は実在する」というメッセージをアピールするうちに、チアリーダーのサラを初めとするグループで反体制運動を始めることになるが・・・。過去と現在の章が交互に出てきながら、主人公の神経症の原因を追って行く。

穴を掘る、つまり無を作っている、でもその虚しい努力をやめることはできないという矛盾は、セーフティ・ネットのない社会に生きることの、終わりのない不安感を描いているように思います。ヴェトナム反戦運動とその弾圧両方の暴力は、結局暴力には暴力をもって対抗するという、アメリカの力による正義の独善性を描きます。それは、いつ自分が追われる側に回るか、という焦燥感に直結しています。また元々誰のものでもないウラニウムの鉱山を、相手構わず売りつけ一山当てることを成功と見なす拝金主義。それは、自分が売ったウラニウムで核爆弾が作られ、それで殺されるのではないか、という恐怖感につながっています。

一見極端な設定ですが、現代アメリカの抱える病理のメタファーとして捉えるとこの小説の奥深さが見えてきます。この小説は、自助努力をマントラとして、他者への想像力や思いやりを欠かすことを良しとしてきたアメリカ社会の暗い部分を批判します。そして、この不安に満ちた社会は、我々一人ひとりが自ら蒔いた種に寄与しているのだ、というアメリカ人が目を背けたがる現実を突きつけるのが本書の凄さでしょう。