花を運ぶ妹 (文春文庫)
作者 池澤 夏樹
価格 800 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2003/04
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■読者の評価     おすすめ度平均

ハワイイに続いて、バリへの扉になってしまうのか。       おすすめ度
池澤夏樹の著作は「ハワイイ紀行」が最高に好きで、それ以外には「マシアスギリの失脚」とか「マリコ/マリキータ」とか「バビロンに行きて歌え」とか「切符をなくして」とか「憲法なんて知らないよ」とか「池澤夏樹の旅地図」とか「南の島のティオ」とか「明るい旅情」とか「星の王子様(これは訳ものです)」とか「百年の愚行」とか「スティル・ライフ」とか「静かな大地」とか「イラクの小さな橋を渡って」とか「新世界へようこそ」とか「異国の客」とか読んだり見たりしてます。
(意外と読んでるな)

ちょっと前に池澤夏樹の「花を運ぶ妹」を読みました。

バリを舞台とするお話です。
手柄を求める現地警察によってヘロイン売買でハメられて逮捕・投獄された日本人青年画家と、その青年を何とか救い出そうとする妹のお話です。

凄いと思った点は2つ。

ひとつはヘロイン中毒患者の心理描写。
多分、中毒患者の手記とか他にも同じようにリアルなものはたくさんあるのかも知れませんが、僕は初めてこういう描写を読んだので圧倒されました。
アッパー系ではなく、ダウナー系のアディクションについて「こういうことだったのか?!」と理性的にも納得させられちゃうのは池澤さんならでは。

そしてもう一つはバリの文化の読み解き。
ケチャ、レゴンダンス、ヒンドゥーの神々、それらを楽しみ崇めるバリの人々、それらを包括するバリの文化、それらをはぐくんだバリの海や自然。それらを「演劇的」という言葉で見事に表現してくれて、まだその土地を体験していない僕にも「すとん」と納得させてくれたのです。
やぱ、池澤夏樹さんてすげー。

というわけで、これを読んだらバリ島を旅したくなっちゃいました。
ハワイイ紀行でハワイイにはまって渡航は早十数回。
サーフィンのポイントも結構あるみたいだし。。。。。。。次、バリを狙っちゃおうかな。


「禁」書評欄読破後の購入。       おすすめ度
ぜひ
事前に情報をあまり入れないで読んで下さい。

(途中読みあぐねたときには
後ろの三浦雅士解説を!)


奇想天外な傑作       おすすめ度
作者の父福永武彦は,毎日出版文化賞を本業の小説ではなく評論 ゴーギャンの世界 で受けたが,息子の方はめでたくこの作品で受けた.そこで福永のファンとして,読んでみた.兄と妹が二人称と一人称で交互に現れ,この世のこととも思えない不思議な話をする.兄は画家だが,ヘロイン所持のかどで Bali で逮捕され,裁判で死刑になる可能性がある.妹は Paris で旅行業者をしているが,兄を助けようと東京経由で Bali に行く.妹はこの島で奇妙な解脱体験をする.すると柳田國男の 妹の力 そのままに,事態は突然好転してしまう奇想天外な結果になって,めでたく収まる,と言う話.Bali の描写がまた美しく,読んでいて楽しい.私は村上春樹が苦手で読んで判った試しがないのだがこの作者の物は幸いにして判るような気がして嬉しい.もしかすると, 作者が物理出身で基本的な所で論理が通っているためか ?


楽園のにおい       おすすめ度
解説にもありましたが、ほんとにむせ返るようなにおいがします。

甘くてすっぱくて湿っぽいのに埃っぽい
けだるいバリの空気のにおいです。

池澤夏樹ファンですが、こんなに濃いにおいのする作品は
初めてではないでしょうか。

熱帯を舞台にしていても、今まではふわりと風を感じる
程度だったのに、まるでまとわりつくような感じです。

テーマもストーリーもなかなかにヘビーですし、
兄+妹+両親の家族全員がしっかりみっちり
登場するからかもしれません。

人物対人物の関係の濃密さと背景の濃さがあいまって
池澤作品にしては濃厚な読み応えなのでしょう。

もちろん、あの理系らしい、一貫したテーマと
ストーリーの構成の妙は相変わらず素晴らしいです。

とても面白かったですが!、池澤作品の、あのさらっと感を求めて
手に取るとちょっとびっくりするかもしれません。

実際に、初めて読んだのが、待ち合わせまでの時間を
喫茶店でつぶしてる時だったのですが思い切り遅刻しました。

軽くスポイルされてしまう感じです。



祈り       おすすめ度
前に、須賀敦子の本の中で池澤夏樹の本について書いてあったので、興味本位で読んだ。読み始めると、長編にも関わらず読み終わるのが名残惜しかった。アジアと西洋という異文化の対比が、バリという場所から描ききってあったと思う。日本にあった“神話”も大事にしたいと思ったり・・・・。読み終わって、また遠藤周作の「深い河」が読みたくなった。扱う重さが違うけれど、「祈り」、「水(河)の流れ」、共通項があるような気がする。
初めに神父さんが登場するところがとても印象に残っている。☆四つというのは、終わり方がちょっと円すぎた気が。