錆びる心 (文春文庫)
作者 桐野 夏生
価格 470 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2000/11
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■読者の評価     おすすめ度平均

錆びる心とは。愛と憎しみで錆びた心のことかな。       おすすめ度
表題作の「錆びる心」がベスト。憎んで別れた夫に対し、憎しみだけでなく、愛情もまだ少し持っていたことに主人公は気付き驚くが、やはり憎しみの方が大かった、という話。別れても好きな人という歌もあるように、好きになった人に対して、最初は愛情だけが膨らんでいたのが、生活とともに憎しみも増え、最後には憎しみと愛情とがバランスするようになり、何かのきっかけで憎しみが増すと、最早一緒に暮らしては行けなくなる。こういうプロセスがこの短編でとても的確に語られている。自分の夫婦生活を見直す上で、一読することを勧める。(ちょっときつくて私は胃が悪くなったけれども。)


小市民的生活に寄り添う狂気       おすすめ度
桐野作品の登場人物はどこかが“キレて”いる。
まともそうに見えても、どこかのネジが外れている。
世間的常識の外側に、人格のある一部分がはみ出している。

本作は短編であるせいか、そのキレかたがおとなしめというか小市民的である。
(短編だからってことはないかもしれないが)

だからその分
「あ、こんな人周りにいるなぁ」とか
「これって、俺のこと書かれてるみたいだな」
そんな気にさせられる。
太宰治『人間失格』を読んだ時の感覚に似ていると言えば伝わるだろうか。

何事もなく、小市民的生活を繰り返している我々も、
実は狂気と隣り合わせなんだよな。


短編であっても作者の観察力・表現力が光る作品       おすすめ度
桐野夏生の短編集。表題「錆びる心」はその中の一つの作品につけられた題であるが、ここに集められたそれぞれの作品の根底に通じる、人間の心の闇に迫った作品である。
それぞれの作品において、登場人物が持つふとした瞬間にあらわれる心の裏側が描かれている。それらは忙しい日常において見すごされがちなものでありながらも、心の奥深くに存在するものであり、読むたびにドキっとさせられた。
それらは見方を変えればささいなものかもしれない。しかし、それを効果的にあぶりだされているのも、桐野の人間観察力であり表現力によるものだろう。


桐野作品       おすすめ度
この著者の作品は、今回初めて読んだものなのだが、とりあえず短編集だし、入りやすいかな、と思って手にとった。個人的には、どの物語も面白かったが、異色だな、という感想。今まで色々な作家の本を読んでいるが、その中でも、かなりユニークなものだと感じた。次はどんなストーリーなのだろう・・・。そんな期待を込めながら、もう少し彼女の作品を読んでみたい。


人間の不可思議さを垣間見る短篇集       おすすめ度
1994〜1997年に雑誌に発表された短編6作品が収めらた作品集。

人間は隙だらけの生き物だな、という感想をもった。隙があるゆえに・・・
 
  ・狂気じみた妄想につかまり
  ・煮え切らない男にないものねだりをさせ
  ・酒に人格を狂わされ
  ・奇妙なものに執着して命まで取られ
  ・見込んだ男にあっけなく裏切られ
  ・十年間あたためた復讐計画を実行し、痕跡ひとつ残さず消え去ったつもりが、相手に大きな傷を植え付けていたことに、余命わずかの男に指摘されて気づく・・・

思いがけないラストが印象に残る点も各編に共通している。

これら作品は約10年前に書かれたものだが、現在の著者ならばこういう展開にしただろうか、などと考えながら読んでも興味深い。