光源 (文春文庫)
作者 桐野 夏生
価格 620 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2003/10/11
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???桐野夏生の描く女性はカッコイイ。それも、絶世の美女や完璧なキャリアウーマンなどの、現実離れした格好よさとは違う。たとえば、『顔に降りかかる雨』(第39回江戸川乱歩賞受賞)と『天使に見捨てられた夜』の主人公である女性探偵・村野ミロや、『OUT』(第51回日本推理作家協会賞受賞)に登場する主婦・香取雅子。ときに大失敗を犯し、失態も見せる。しかし、彼女たちはその内に秘めているのだ。窮地に追いやられたときに取り乱さない冷静さを、どんなトラブルにでも果敢に立ち向かう豪胆さを。そんなヒロインたちに魅了され、桐野夏生ファンとなった読者は多いことだろう。本書にもまた、人間的な弱さを持ちながらも自身の人生を懸命に切り開こうとするひとりの女性が登場している。

???1999年に『柔らかな頬』で直木賞を受賞して以来、2年ぶりに発表された長編である本書は、映画作りの現場が舞台である。プロデューサーとしての名声を得るため映画の成功にすべてを賭ける玉置優子のもとへ、スタッフが集まった。昔の恋人を見返したい名カメラマン。自分は天才だと信じる新人監督。人気絶頂の二枚目俳優。かつてのアイドル。「いい映画を作る」の言葉の裏に、それぞれの思惑が錯綜し、衝突する。犯罪や事件性は皆無であるが、スポットライトを浴びたいと熱望する人間たちのしたたかな姿が淡々とつづられる本書は、光と影で描かれたサイレント映画のような深い味わいが感じられる作品である。(冷水修子)



■読者の評価     おすすめ度平均

個人的には好きな作品です。       おすすめ度
この小説は桐野氏の転機に書かれたものだと、個人的には思っています。
柔らかい頬で培ったモノローグを挟むおなじみの描写を入れつつも、
ストーリー進行の視点をどんどん変えていく実験的な試みもしていて、
新鮮とは言えないまでも楽しく読むことが出来ました。
「これまで読んだことがない小説」・・・とは思いませんでしたが、
登場人物が皆、自分のことしか考えていないという設定を
最後まで貫き通した作品は珍しいのかもしれませんね。
近年の著作に見られる、登場人物の突き放しや、生々しい毒がもっと入っていれば、
ぐっと面白くなったと思います。
そういう意味でも手探り感が味わえる、桐野氏の貴重な小説だと思います。


実社会の縮図?       おすすめ度
本作品は、いわゆるミステリーではありません。

映画の製作に関わるプロデューサー、映画監督、撮影監督、男優、女優が、それぞれの打算、体面、野望を賭け、生き残りの為にぶつかり合う物語です。

人間の非常にどろどろした部分が良く描写されていて面白いです。

迷う新人監督、それを御せないプロデューサー、疑心暗鬼になる俳優....。
どこかで見た事あるな、と感じる読者も多いのではないでしょうか?
実社会で、特に珍しくもなく繰り広げられている光景です。

本作品の登場人物を、自身の周りの人物に置き換えて読んでみるのも面白いかと思います。


怜悧な人間洞察が冴え渡る傑作       おすすめ度
 ストーリー展開と人物造形の両面でスリルとサスペンスに満ちたすばらしい作品。「OUT」と同じく出口(突破口)を求めてさまよう人間の群像をみごとに描いている。物語への没入をやや阻むほど鋭い作家の乾いた視線に感心しながら心震わせつつ読み進めた。間延びしたところが皆無、贅肉のまったくない見事な文体もすがすがしい。世界中のどこに出しても恥ずかしくない日本文学の誇りである。
(302ページの11行目「優子が吐き捨てると」は「佐和が」の誤りに違いない。編集者はしっかり原稿を読むべし)


極めて桐野氏らしい秀逸な作品       おすすめ度
本作はミステリーではありませんが、一級のエンタテイメントでかつ、深い人間洞察が含まれています。それ故に桐野氏の持ち味も充分に生かされた作品になっています。
彼女の小説の主人公は皆、自分の利益を最大限に考える行動を取ります。そこから、彼女の作品のキーワードである「サバイバル」という言葉が炙り出されます。
厳しい環境や、自らを束縛するものからの解放を望みながら生き抜くこと。そこには他者への思いやりよりも、他者を利用して自分が生き残る「戦略」が生じます。それが彼女の小説の真骨頂です。
最後は「狂乱」というカタストロフに導かれますが、それは真の意味でのカタストロフではなく、次なるカタストロフへの前哨に過ぎません。


様々な思惑により事態は変化していく       おすすめ度
個人個人の思惑がぶつかり合うことにより事態が変化していく様子が面白いです。
政治の世界、仕事などでも、個人個人の思惑により、物事が進まなかったり、
とんでもない方向に向かっていってしまうことがありますが、
そういった状況を上手く表現しているかと思います。