時の渚 (文春文庫)
作者 笹本 稜平
価格 650 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2004/04/07
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■読者の評価     おすすめ度平均

あまりにも都合の良い設定というか、偶然の要素が多すぎる       おすすめ度
日本では数少ない、本格的な冒険小説の書き手である笹本稜平氏
のデビュー作である。しかし、読み始めてほんの数10ページで、先の
展開がなんとなく読めてしまう。

後はどんな味付けで楽しませてくれるか、なのだが、それにしても、
元刑事で、過去に傷を持つ私立探偵が人探しをするという、手垢に
まみれたパターンである。どうなることやらと思って読み進めたが、
終盤ではそれなりの感動が待っていた。

ただ、あまりにも都合の良い設定というか、偶然の要素が多すぎる
のが気になった。

臆面も無くこのような話が書ける所が、後に『天空への回廊 (光文社文庫)』や
『太平洋の薔薇 (上) (光文社文庫)』といった優れたエンターテイメント大作を
ものにする下地になったのかも知れない。


涙が出たよ       おすすめ度
末期ガンの老人から元刑事の探偵に依頼があった。
「生まれてすぐに生き別れた息子に会いたい」
手がかりは殆どない。35年も前のことだ。
そして依頼を請けた探偵には酷い過去があった。
二転三転するストリー。
父と子、母と子。
家族とは何なのか、家族の絆とは。
途中、冗長で懲りすぎの箇所もあるけど、
老人は35年ぶりに息子と会うことができるのか。
終章、大きな感動が待っている。


面白かった!       おすすめ度
面白かったのでそのまま一気に読んでしまいました。
文章もそんなに難しくないから読みやすい作品です。
最後はすこし泣いてしまいました。
小説の中でも犯人はかなり特定されて、呼んでいても怪しいのはその犯人だけども、その犯人に至るまでの過程とか環境とかがなかなか複雑でたどり着かなくて、でも飽きずに面白く読めました。


登場人物の造型がうまい       おすすめ度
「太平洋の薔薇」で第6回大藪晴彦賞を受賞した作者のデビュー作。
本作では、第18回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞した。

末期のガンで余命幾ばくもない老人が三十数年前に失った子供を捜すことになった、私立探偵 茜沢。

彼はまた、3年前、逃亡中の殺人犯の車にひき逃げされ、妻子を失っており、この犯人として一人の男の調査も行うこととなった。
一見関係のない二つの調査。これらが次第にリンクし、様々な「血の絆」が長い時をへて明らかとなる。そして、茜沢により、「パンドラの箱」があけられる。

作品の最初の数10ページで、ある程度作品の骨格は見えてしまう。しかしながら、「謎」はそれだけに終わらない。最初で見切りをつけることなく読み進めて頂きたい。
「太平洋の薔薇」のレビューにも書いたが、この作者は登場人物の造型がうまい。主人公をはじめとして登場人物のそれぞれが個性を発揮し、作品に活気を与えている。

文庫化・大藪晴彦賞を機に多くの方の目に触れてもらいたい作品である。



人捜しハードボイルド       おすすめ度
 笹本稜平の人捜しハードボイルド。やや過大評価かも知れないが、終盤に味わった痛みは大きい。それが本作の余韻を更に大きくする。大どんでん返しだね。それとともに、残っていた謎もなつなるわけか。

 ふと、老人から私立探偵の茜沢圭は「息子を捜して欲しいんだよ」と持ちかけられる。松浦と名乗った老人は死期が近い。感情が映った茜沢は無償で探し始める。まず見つけるのが、息子を託した35年前のユキと名乗る女性。それが、刑事時代の友人の真田の追う女子高生殺人事件の容疑者、駒井繋がっていく。駒井は、茜沢の妻子をひき逃げした容疑者でもあった。そして、放火事件も。

 繋がり方が、ラストから見ると酷だな。逆に。ユキこと、幸恵という女性にも注目が集まるがなんと言っても目を離せないのが駒井。中盤から、西尾という男とともに駒井と接触しようと試みる。

 駒井とは一体なんなのか。駒井は何故多くの人を殺すのか。裏にある事情という事情。酷なほどに待ち受けているラストに、淡々と近づいているのだなと読み終えて気付く。

 親子の絆、血縁関係というのが本作の重要なテーマであることも、読み終えて初めて大きく実感できる。話自体は面白いのでそれなりに読み進めるのだが。第七章と終章が圧巻。茜沢がたどり着いた真実は酷だったのだろうか。良だったのだろうか。両方だろうか。

 少なからず、幸恵の存在と松浦の願望は実際言うと叶う。それはそこまで酷でもないし、ラストも別に感じが悪いわけではない。何とも言えないのは、そのあとだから。

 酷く本作に感情移入してしまったので過大評価したかもしれない。第七章と終章なしでは本作は終われないだろうな。とともに、何とも言えないので続編が読みやいものだが、それは贅沢かな。巻末解説を見ると笹本稜平と言う作家の本随がここにあるわけではないようだ。と言ってもこれは笹本稜平という作家。違った長所なのだろうな。他の作も楽しみ。