聖水 (文春文庫)
作者 青来 有一
価格 660 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2004/06
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■読者の評価     おすすめ度平均

長崎は今日も聖水に濡れて       おすすめ度
文學界新人賞出身らしい、本格的で力のある小説です。
何を以て「本格的」とするかは多々論はあるでしょうけど。
当たり前のことですが、小説というのは文章で描写して読者に伝えるものです。既存のイメージに頼ったり、展開だけを急ぎ足で追って場面の描写がおろそかになっている小説も少なくはないのですが、本格派青来有一は違うようです。

表題作『聖水』についていえば、長崎の夏の描写が細部にわたって綴られていて、それでいて決して冗長ではありません。その中で少しずつ、登場人物の葛藤と事件の展開が読者に自然な形で説明されています。
情景だけでなく、人物描写も巧みです。特にヒロインのカヤノさんは魅力的に描かれています。長崎の空の下で、弾むように生き生きとしています。

ただ、文章はちょっと読みにくいです。次の改行に至るまでの一つの段落が長いのは悪いことではないのですが、せめて「」に入った台詞の部分だけでも改行してあれば読み易かったのですが。でもこの読みにくさが、長崎の抱える幾分重苦しい独特の雰囲気を表しているともいえるのですが。