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???2002年度の江戸川乱歩賞受賞作。長崎の原爆投下の生々しい描写から幕は開ける。すぐに舞台は現代へと変わり、日光の骨董市で主人公、日下哲が運命のリールに出会う場面が描かれている。突然の場面転換に少々戸惑いを覚えるが、全く異なる2つの場面がどのように重なっていくのかを読み解くことも、本書の楽しみ方の1つなのである。
???物語の序盤は、フライフィッシングの説明やコマーシャルの制作風景などの専門的な記述が多い。自身もフリーのコピーライターである著者の得意分野なのであろうが、知的好奇心を満たすには興味深い半面、ミステリーの流れとしてはやや遠回りな印象を受ける。しかし中盤にさしかかると、リールの売り主である女性、月森花と主人公や雑誌記者との会話がテンポよく進み、ストーリーが広がりを見せ始める。なかでも、雑誌記者が熱く語る現代政治への批判は、本書の中核をなす「反戦」メッセージとなっており、一読に値する。(冷水修子)
これで乱歩賞なんでしょうか?
2002年文春傑作ミステリーベスト10 3位。
2003年度版このミス10では上位60作品に入っていない。
骨董市で偶然手に入れたフライフィッシュ用のリールの中に古い16ミリフィルムをみつけたCMディレクター日下。すでにぼろぼろになったフィルムは再生困難であったが、一部復元したところ、どうやら湖畔でフライフィッシュをしている映像らしい。このフィルムを政党のPRフィルムに使用することになるが・・・・。
作品自体は文体が読みやすくすらすら読める。しかしながら、ページ数を限定された選考作品にたくさんのことを詰め込みすぎて、どれも踏み込みが浅くなってしまっているのが残念だ。作者は、ミステリーを通して「葬り去られた戦時中の犯罪」をえがこうとしているのだが、ミステリーの展開としては強引で、とくに動機に関しては、これほどの罪を犯すものとしては納得がいかなかった。
近年の「12YO」「脳男」「テロリストのパラソル」「十三階段」などと比べると、乱歩賞受賞作としては並か並の下程度の作品だと思う。
テンポそのものは悪くない。軽いといわれればそれまでだが、サクサクと読み進められる、ということ自体は十分に武器だろうし。ただ…どうも、作品全体としてのバランスが悪いというか、テーマそのものが不鮮明というか…。
始めは釣り好きのコピーライターによるCM作りから、広告業界の話のような形でありながら、話が進むうちに戦争(の批判)へと移り変わって行く。しかしながら、謎解きには魚釣りも…と様々な分野に渡る。勿論、それを料理することだって可能なのだろうが、この作品に関しては上手く料理されていない感じだ。結果、すべてが取ってつけたような感じで、不鮮明な印象が強く残ってしまった。
過去の受賞作をみても、「破線のマリス」「八月のマルクス」といった所謂業界ネタを題材にしたものは新奇性はあるが話の奥行きが浅い傾向にある。これは多分に登場人物の造詣の軽さと浅はかさに起因しているのではないかと思う。
さて、本作品だが、話の進め方が軽く、各キャラクタが軽く、どうしても戦争批判というテーマが同様の作りものに思えて仕方がなかった。このテーマそのものがどこからか借りてきたような印象が残り、胸に訴えてこないのだ。
会話がぎこちなく、プロットも起伏が少なく、謎解きの厚みもなく、ミステリとしての感興もない。何がとりえといって、特に見当たらない作品だった。もう少し作りものを作りものでなく見せる技術を作者は学ぶべきだと思う。
リールを使ったのもなるほどっと思わせる筆運び。
骨董市から戦後へと行く時代の流れがあまりにも興味を引く運びになっていた。
ミステリー好きの方には絶対に読んでほしい一冊です。

