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(解説にありましたが)
淡々と積み上げられた描写によって、一歩退いて考えると
「(いくら最近、事実は小説より奇なりと言う事件が多くても)ありえねー」
というこの話が「あるかも??」と引き込まれてしまいました。
そして真相。
意外とは言っても登場人物以外から犯人を出すわけにはいけないという
ミステリーのある種の矛盾の中でも楽しめました。
最後の数ページは蛇足。でも乱歩賞ならありかな?、と。
タイトルの翳りゆく、は弱い。
旧題が違うことを知りましたがこちらの方がいいな、気取ってなくて。
やはり上限枚数550枚という乱歩賞の性質では、書ききれない部分があるのは仕方が無いことなのかも知れない。
過去の事件の場面、容疑者の車をあっさり見逃してしまう部分は少々お粗末。
最後のどんでん返し、ちょっと無理もあるかな?という感もしましたが、全体的によくまとまった作品でした。
ただ、難点としたら、人物描写でしょうか?個人的には誘拐犯の娘である朝倉緋呂子の淡白さが気になりました。新聞記者になる位だったらあんなに冷めているのはどうかと・・・
あとは、ラストに付け加えられたエピローグは蛇足だったと思います。それかもう少し現実的な方がよかったと感じます。このエピローグがこれまでのトーンを一新して、安手のドラマのようにしてしまったように感じられました。
殆どの人物描写がそれほど詳しくないのに、それほど必然性もないのに、目撃者である風俗嬢の生活、行動描写が詳しすぎたような気がします。やっぱり男性読者を意識してでしょうか?
いくつかの点は気になったものの、最近の新進作家のミステリーの中ではよく書けているし、構成の仕方などは上手いと思います。
第49回江戸川乱歩賞受賞作。同時受賞に『マッチメイク』(不知火京介著)。
受賞の理由として、選考委員が述べているように丁寧な描写というのが第一印象。手堅い、とでもいうか。結構、多くの人物が出てきて、視点の切り替わりも多いのだけど、それほど混乱することなく読み勧められるし。ハードボイルドと帯には書かれているけれども、むしろ社会派ミステリー的な印象ではある。個人的には、同時受賞の『マッチメイク』よりも楽しめた。
ただ、細かく見ていくと文句の言いたくなる箇所もチラホラ。例えば、20年前の事件の場面。いくら何でも、あの警察の対応は杜撰過ぎる。また、なぜ社主がこの事件の再調査を狙ったのかも謎。また、事件の関係者の一人が風俗嬢である必然性も無い。そして、丁寧な描写であるが故に、乱歩賞作品でありがちな、終盤の大急ぎ感がこの作品にも残っている。1つ1つは細かいことなのだけど、これだけ重なってしまうとどうも気になるのである。
とはいえ、丁寧な描写力は確かだし、(2年経過しても出ていないようだが)枚数制限のとれた作品でもう1度読んでみたいと思う。
しかし、本音を言わせてもらえば「竜頭蛇尾」の一言に尽きる。
最後のオチがあっけないのだ。意外といえば意外なのだが、その意外性が本格ミステリのそれに近いのである。本作は社会派ミステリの気配が強く漂っているというのに・・・
決定的にミステリの核心にある動機、罪を犯してしまった者の心の葛藤がないというか、書かれていないというか、その点はかなり不満が残る。その部分の開示がミステリのクライマックスとなって、しかるべきであろう。横山秀夫先生の『半落ち』と比べるとその点は明らかだろう。社会派ミステリとは小説のためにご都合主義の犯罪をとってつけたようにしていたのではダメなのである。犯罪とは何かという問いかけ、ある意味、哲学的態度というようなものが要求されていると考えるべきではないか。
プロ作家からみて、同業者になってもそうそう危険はないなレベルの作家さんになると思う。47で受賞だべ? 47ってあの藤原伊織と同じ受賞年齢。毒にも害にもならない感じの人かな。
他の人が指摘しないから書くけど、P236からの風俗の記述納得いかないんだよね。この店いったい何? イメクラ? にしちゃー、60分三万円なんてありえねーだろ。 じゃソープ・・・ みたいだねバスタブもあるし。でもその接客する女の子に直接お金を渡すなんてありえねーだろ。それじゃ援交のやり方だよ。
大体、この華原優っての風俗嬢である必然性がない。おっさんがイマドキの若い女の子を書くとこういうボロが出るから気をつけたほうがいいかな、と個人的には思う次第。本当、朝倉比呂子にしてもそうだけど、オッサンの書いている女の子だってのがモロバレなんだよな・・・
年齢のせいにして逃げるのは簡単だけど、どうしても若い女の子をメインに据えたいのなら石田衣良先生の著作に目を通した方がいいかな。
まあ、でも乱歩賞のなかでは比較的ましなほうかも・・・

