刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫)
作者 高木 彬光
価格 840 円
出版社名 光文社
出版年月 2005/10/12
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■読者の評価     おすすめ度平均

(カー+クイーン+クリスティー)÷3 = 傑作推理?       おすすめ度
作者は本書について、ディクスン・カーの不可能トリックとエラリー・クイーンの謎解きの論理、そしてアガサ・クリスティーのストーリー・テリングを目指したと、何かで述べていたように記憶している。
あるいは私の思い違いかもしれないが、本書がこの3大家の長所を目指したというその意欲には、大いにうなずけるところがある。

本書では、日本家屋の中で唯一完全な密閉空間である鍵のかかった浴室内に、胴体以外の首と手足だけが残されていたという逆密室殺人を扱っている。
それ以外に、双子の美女とその兄に彫られた刺青が彩を添える。
その刺青とは、姉は大蛇使いの「大蛇丸」、妹は大ナメクジ使いの「綱出姫」、そして2人の兄にはガマ使いの「児雷也」で、そこに見られる「三すくみ」の呪いと、「顔のない死体」ならぬ「胴体(刺青)のない死体」とくれば、カーばりの怪奇趣味である。

ただ、解き明かされてしまえば、密室トリックはいかにも肩透かしのような感じがする。
それと江戸川乱歩は本書を推理作品としては激賞しているが、「小説としては上出来にあらず」と述べており、実際クリスティーのストーリー・テラーぶりには程遠い。
とはいえ、全編を通して怪奇な雰囲気が漂う中、そこに描かれた不可能犯罪を快刀乱麻のごとく解き明かす神津恭介の名探偵ぶりは、鼻につく感じはするもののなかなか見事で、読み応え充分である。

なお、本書は第2回探偵作家クラブ賞を、横溝正史の最高傑作『獄門島』と坂口安吾の『不連続殺人事件』と最後まで争い、『不連続〜』に敗れ次点となった。