半島を出よ (下)
作者 村上 龍
価格 1,995 円
出版社名 幻冬舎
出版年月 2005/03/25
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■読者の評価     おすすめ度平均

おもしろかった        おすすめ度
上巻同様、北朝鮮側の面々、日本政府の面々、そしてホームレスの人々の生い立ち、キャリア、視点などが詳細に描かれ、物語の背景も細かく作り込まれている。ただ、登場人物が武器の説明を延々としたかと思うと、あっと言う間に死んでしまったり、スピード感は上巻よりも損なわれているような気もする。ボリュームの多い大著ですが、読後感は爽快。


生き延びろ。       おすすめ度
この小説は私が今まで読んだ本の中で最も感動したものの一つであるが、だからこそ読み終わった時点は、書評を書くとかそういうレベルのことができない。これは、村上龍氏の小説を読んだ直後に感じる共通の事象だ。いま、かなり長い時間を経てこの小説のことを不意に思い出し”あの、鮮明に印象に残っている文章をもう一度読みたい。”と本棚からこの本を取り出しページをめくり、線を引いた多くの箇所をたどった。その部分は、下巻142ページと159ページに記載されている、スリョン中尉の父親の言葉だった。「スリョン、よい詩を書くことができる人間になりなさい、読む人の側に立った詩を書くんだよ。」村上龍氏の小説には、暗闇の中に細く力強い一筋の光がさす部分がある。その部分に救われたマイノリティーに属する人間の数は、少なくないはずだ。


リアルな絶望感と未来への希望       おすすめ度
この「半島を出よ」という作品は、上巻と下巻で少しスタイルが違っていて、上巻が徹底的にリアルな想像を元に執筆された話であり、下巻はエンターテイメント性を重視した物語へと展開される。それ故、若干上巻・下巻で読者として戸惑ってしまう部分はあったが、全体的にとても楽しむ事が出来た。話のボリュームは多いけれど、作品通してスリリングな展開が広がり、飽きずに読ませてしまうのはやはり流石だと感じた。

この下巻は何も有効な対策が取れない日本の政府やメディア、そして諦めに支配された風潮に代わり、社会のはみ出しモノ達が北朝鮮のテロリスト達に対し、必死の抵抗を行うという話がメイン。前述したように上巻とのスタイルが少し違う為に、期待を裏切られる読者も多いかと思うのだけれど、一貫した村上龍の意志は受け継がれているし、本来彼の小説はこういった壮大なスケールをもった物語こそが持ち味だと思うので、僕自身はこういうやり方は上手くはまったというように思えた。ただ、あまりにも話に無理がありすぎる部分も多い為、以前の名作に比べると若干物語りの信憑性が薄いと感じる部分があった事も否めなかった。

物語重視故に、上巻に比べると、この下巻は魅力的な人物が多数現れる。北朝鮮軍のブレイン達、占領された福岡の果敢な人間達、そしてはみ出しモノであるイシハラグループのメンバー達。緻密な人間描写と彼らの生き様、状況が変わるにつれて変化する心理描写等、とてもスリリングで読み応えがある。傍目では優秀な人間でも、色々な葛藤や驚き、そして弱さを持っていて、そういったものに対し果敢に挑んでいく姿は、やはり美しいし、僕自身力を与えられる部分でもある。ラストがあまりにも綺麗に決まりすぎていて、何処か矛盾を感じてしまうのが勿体無いのだが、あまりにもリアルで残酷な現状を暴き出してしまった上巻に対して、未来への希望というものを村上龍自身、最後に示したかったのではないのだろうか?そんな風にも思えた。


賞味期限が、       おすすめ度
あくまで私個人の感想ですが、村上 龍さんの作品の賞味期限は極めて短いのではないかと。

ソノカワリ!強烈な、出版された時期限定の、鋭く、熱く、強いチカラのある作品です。

しかし、今読み返すと、もう少し古く感じてしまいます。

文章にチカラはあるし、描写も丁寧で、細かく、それでいて滞らせない計算された文章ではありますが、読者の想像の遊びを許さない厳密さが、評価の分かれる所ではないでしょうか?

私個人にとっては「インザ・ミソスープ」がベストの作品です。


「退廃の発見」       おすすめ度
上巻から続く、圧倒的なダイナミズムと構成力は当然のことしてさておき・・・

村上龍の、言葉の使い方の正確さに脱帽させられた。

下巻のチャプターのひとつに、「退廃の発見」というのがあります
北朝鮮の軍人の一人が主人公になっている章で、その軍人は、ある1枚のポスターをきっかけに「退廃」というものは一体どういうものなのか、その概念を探し始める
この章を通じて彼は試行錯誤して、最後に「退廃」が何なのか、どこにあったのかを見つける
文字通り、退廃の発見。
ネタバレになるのでそれが何だったのかは書きませんが、ここで村上龍(というか、その章の主人公?)が「退廃」と称したもの、まさにそのとおりで、今も頭から離れません・・・

実は、この章自体メインプロットに欠かせない部分ではない
実際、私も再読したときにこの部分のすごさに気づいた

上巻下巻あわせて、何度読み返しても時間の無駄にはなり得ない、新しい発見がある本