ジバク
作者 山田 宗樹
価格 1,680 円
出版社名 幻冬舎
出版年月 2008/02/22
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■読者の評価     おすすめ度平均

主人公のベタな転落劇を誰も笑うことなんかできない       おすすめ度
 ハッキリ言って小説としては思いっきりベタで、小説を文学として、芸術として読む向きには物足りなさを感じるだろう。でも、この一見ベタな人物造形、プロット、ストーリーがやけにリアルに感じられる。それは今の世の中がまるで小説のように、思いっきりベタに、格差社会化しているからなんだと思う。年収2000万円のファンドマネージャー、詐欺まがいの電話営業マン、日払いの交通誘導員…何かのきっかけでシフトダウン、一旦落ちたら2度と這いあがれない転落劇。これ、一般のサラリーマンだって、インサイダーがばれたり、不倫で立場無くしたり、事故ったり、病気したりって何かのきっかけで安定したサラリーマン生活とおさらばなんてめちゃくちゃリアルだと思うんだよな。
 この本のタイトル、「ジバク」なんだけど、この主人公、決して自爆しているわけじゃない。どっちかっていうと地雷踏んでるっていうかトラップにかかってるんだよね。そういうのも自爆って言うのかもしれないけど、自分で爆弾抱えてて、いざとなったら自分で爆発させることができる、っていう一種の自律性っていうか希望として著者は自爆ってものを捉えていて、そうした最後の砦としての「ジバク」ってタイトルなんじゃないかなって思う。あるいは、結局自分の心持ち次第って反語としての「自縛」なのか?
 今の世の中、主人公もそうだけど、あまりに“金”って一元的な価値観に縛られてるよね。皆が皆、金に最適化した生き方をしてるっていうか、まぁそれは幻想なのかもしれないけど、そういう空気は否めないよね。ITってのがそれを加速してる部分もあってさ(この小説の中に出てくるテレアポの極意で“相手はカモかゴミ”なんてデジタル思考はまさにITであって)。
 いろんな意味で、イマ的な小説って感想である。「下流社会」と一緒で、「ああ今の世の中、やっぱこうなんだ」って安心感を得られる、そんな効用もあるかもしんない。


内容と参考文献       おすすめ度
 麻生がファンドマネジャーの部分は面白く思いましたが、あとは「あれよあれよ」の展開です。同一人物とは思えない進行の仕方です。
 それにしても、参考文献の提示の多さにはびっくりします。内容から見て、そんなに参考にしているようには思われません。参考文献の意味を取り違えておられるのでは?


前半は面白いが後半は残念、「嫌われ松子の一生」の男版とは言い難い       おすすめ度
作品としては普通に面白く読みました。
ただ、作者自ら「嫌われ松子の一生の男版」と言っていましたが、それには共感できませんでした。
確かにどんどん坂道を転がるような転落人生という意味では同ジャンルなのかも知れませんが。

松子の場合は「セクハラ」や「生徒をかばい罪を被る」といった、本人は悪くないのに次々と
悲惨な出来事が起き、そこからどんどん坂道を転がり落ちて行ったのに対し
この主人公の場合は言ってしまえば、どれも元をたどれば「自業自得」なことばかり。
確かにどんどん不幸になっていくが、どうしてもで同情できない。
また「それでも何とか生きていこう」といった精神的な部分や葛藤も感じられない。
特に後半はただ不幸な出来事が書き連ねられているだけで面白みは感じられなかった。

普通に面白い★3つ − 松子の男版ではない★1つ = ★2つ、としました。
この作品を語るのに作者自ら「嫌われ松子の一生」を挙げたのが良くなかったかも知れません。
そう言われなければ普通に一作品として読み終えることが出来たような気がするので、残念です。


残念。       おすすめ度
山田宗樹さんの新作、とても楽しみにしていましたが、
私の期待したような内容ではなかったです。

まず、主人公・麻生の生の心が全くこちらに伝わってきませんでした。
なんどもどん底に突き落とされるのですが、章が変わると自然に新しい生活に入っていて、
きれいにリセットされているのです。
年収2千万の男がほぼ無一文になるわけですから、
それなりの葛藤があっても良いと思うのですが、
誰に頼ることもなく恨み言も言うわけでもなく、(多少は言いますが)
かといって「また、はいあがってやるぞ」と言うパワーがあるわけでもなく、
新しい生活を淡々とこなしていくことが、
不思議でたまりませんでした。

著者の代表作である「嫌われ松子の一生」で松子は、
男に頼ることによって新しい生を受けていき、
その前向きなエネルギーが感動を呼んだと思います。
「松子」の男バージョンを狙ったとしか思えない本作ですが、
どん底に落ちた苦しみが感じられなかったですし、
その彼が、何に(誰によって)生かされているのかが見えてきませんでした。

また、箇条書きで主人公が独白する部分と、短いセンテンスでの会話文が多く、
本の厚さの割に中身が無いような気もしてしまいました。


「自縛」であり「自爆」であるジバク。       おすすめ度
坂道を転がるように堕ちていくって言うけど、最初はほんのちょっとした躓きだったものが、
一度坂道を転がりだすと仕舞いには加速度がついて、ほんとあさっての方向に転がって
いってしまうのだなぁ・・・・と思った。
そして人生の転がり度は、この主人公が住んでいる部屋の広さと家賃で如実に表されていた。

なかなか面白かった。
でもやっぱり『嫌われ松子の一生』の方が断然面白かった。
女が主人公で転落していく方がドラマチックだと思う。
男が主人公だと転落のきっかけが常に女・・・・。

この小説の主人公の「自縛」とも「自爆」ともとれる話。
だからきっと山田宗樹はカタカナで「ジバク」としたのであろう。