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会社社会にありがちのごく当たり前のイジメ、そねみ、お追従、女性差別等がある生活を送る、ごく
普通の人達の日常があるんだ、と言う事を教えてくれたとこではないかしら。
小説、それもサスペンス推理ものとしてのできはもちろんの事、それと共に、ある種の情報小説とし
て私には意味が大きかった。
今回のこの作品は、一転警察の活動対象である泥棒と言うアウトローを扱ったものになったが、それ
は要は紙の表と裏。ある意味これまでの横山作品と、別段違和感なく読み進む事ができた。
そして何より、やはり情報小説として、多くの泥棒業界(?)用語と彼らの日常を伺い知る事ができ
て実に興味深かった。
もちろん双子の弟や、焼死した両親の問題など、謎解きやドラマはきちんと配されて、サスペンスも
期待どおりなかなか深いところがあり、これも十分読者は満足するだろう。
でもしつこいようですが、いやぁ、泥棒社会の日常が、面白いですよぉ。
そのせいではないでしょうが、最初の方はなかなかとっかかりがない感じ。主人公が双子で弟がすでに亡くなっていて、魂だけが耳の中に残っている・・・という設定を理解するまでに時間がかかりすぎたかもしれません。
とても個性的な作品だとは思うのですが、最後まで読んでもなんとなく物足りなさを感じてしまいました。
違和感をもたせつつも読者をひきつける力はさすがで、違和感は途中で消え、そこからは一気に読破したものの、それまでの歯に物が詰まった感じが読後感として残りました。
修一には双子の弟・啓二がいた。しかし15年前、啓二の境遇を苦にした母親によって焼死させられてしまった。修一と啓二は同じ女性(久子)に思いを寄せるもお互いを認めあっていた。それだけに世間体を気にして啓二を奪った母親が許せずに、法を捨てノビ師となる。
連作の短編となる本作品はややオカルト的な設定だが特段奇異に感じるほどでもない。それは侵入のテクニックやオカルト的設定に任せた謎解きに頼ってはいないからだ。リアリティ云々よりも「修一が見ていた双子の弟」と「母親が見ていた息子」の明暗が色濃く出ているように思う。
巧妙な伏線や哀切たっぷりな心理描写はさすが。『影踏み』というタイトルにも深みがある。
静かにはられる伏線とどんでん返しのカタルシスは健在ながら
警察小説の世界に新境地を開いた著者が「ノビ師」と
いわれる職業泥棒を主人公にしたことが異色であり、
死んだ弟の声が聞こえているというオカルト的設定も
異色。まさにこの異色さがこの作品の評価が分かれている理由であろう。
しかし、純粋にエンターテインメントとして楽しめた。
あえていうならこの主人公真壁修一は横山秀夫版「新宿鮫」
とでもいうべき「異色さ」という十字架を背負った
ダークヒーローなのではないだろうか。
短編がまとまって長編になっている本作から1つ選ぶとしたら
「抱擁」を選びたい。人間心理の機微と巧妙な伏線、
待ち受ける意外な結末を堪能できた。

