スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙
作者 五條 瑛
価格 1,890 円
出版社名 集英社
出版年月 1999/12
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    第3回 大藪春彦賞   受賞
「お父さんは必ず来る!」―守り石にこめられた家族への愛。北朝鮮と日本、ふたつの家族の間で揺れ動く北朝鮮スパイが下した究極の選択とは?『プラチナ・ビーズ』に続く本格スパイ小説第2弾。

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■読者の評価     おすすめ度平均

工作員も人間       おすすめ度
工作員はもう人間らしさをすべて捨ててしまっているのかと思っていた。でもこの本に出てくるエージェントたちは皆とても人間臭い。
チョンも、スーパーKを持ち込み経済をかく乱させようとする行為など、一面は厭うべき工作員ではあるが、家族を愛し、自分の責務を全うしようとする、そんなところに悲しさを感じた。
今この小説に描かれた国の様々な問題が指摘されている。
しかしその国に住む人がこのようにやりきれない思いをしているという事を読むと、この国の人を怨んだり、憎んだりするのではなく、この国の人も幸せになってほしいと思った。
チョンが決して祖国を嫌いではなく(むしろ好き)、工作員としての許されざる行為も全て家族への愛によるものだというところが涙をさそう。

作者の綿密な調査と知識、そして語り口によってぐんぐん惹きこまれてしまった。


面白くなってきた       おすすめ度
シリーズ1作目「プラチナビーズ」は、登場人物のキャラが先にきて、物語がそのキャラにがんばって沿っている感じがして、さらに「え?本当に情報扱うプロがそんなこともわからないのか?」という部分もありましたが、この本はそういう部分がほとんど払拭されていました。

ひとりの男をはさんだ2つの家族、それを囲むいわゆる情報部関係者の思惑と見えない戦いが繰り広げられますが、いわゆるスパイ物語というよりは、人間の持つ複雑さや、無意識のうちに自分を支配している国や文化、習慣などの大きさを描いているように思いました。

中心にいるチャンが、いかに誠実で人間的に良い人格を持っていたとしても、彼が行ったものとその結果は、素晴らしいものでも明るいものでもなく、結局は人を利用し殺し、その幸福を踏みにじるものであるという悲劇が淡々と描かれていました。
何も知らずに犠牲になるのはいつも子供ですが、この話しの中では、かつて自分もその犠牲となった葉山が、想いをこめて彼らに語りかけ、手をさしのべています。

彼らの未来は決して明るいものではありませんが、希望がないわけではないのだ。
そういうふうに我々に思わせるEDは、感動的でした。



最も泣いた本の1つ       おすすめ度
北朝鮮の拉致被害者問題が今のように声高に叫ばれる前に発表され、のちに大薮賞を受賞した、いわゆる「鉱物シリーズ」の2作目にあたります。

「プラチナ・ビーズ」の数カ月後なので、黒髪のフェロモンキングは海の向こうに行ってしまっていて、彼目当ての方には今回御期待に添えないでしょう。しかしなにより今作では葉山の目覚ましい成長ぶりが見られます。いい仕事をしています。…そして北と日本に2つの家族を持つ男の真実。謀略小説として素晴しい作品であるのは言うまでもありませんが、さらに家族とは、祖国とは、という精神性、人間性まで深く、しかし嫌味なく描かれているのはさすがの一言につきます。
私が読んだ頃は、北朝鮮の映像というとTVでは総書記の顔とマスゲームくらいしか見ませんでしたが、今は貧しい農村地区や中国との国境の川などもよく放映されるようになりました。この本の情景が、より眼に浮かびやすくなったと思います。

もしも「プラチナ・ビーズ」を手にとったなら「スリー・アゲーツ」もぜひ読んでほしい。むしろ「スリー・アゲーツ」を読むために「プラチナ・ビーズ」を読むのでもいい、とさえ思います。
そして早くシリーズ3作目「パーフェクト・クォーツ」が世に出ることを切に望みます。



人の良いテロリスト(補佐(;^^)。)。       おすすめ度
 なんといっても上の印象につきますな……、良い人なんです良い人だ(汗)。一作目に引き続いて北朝鮮ねた、北朝鮮公式発行とまで囁かれる偽ドル札“スーパーK”の関係者ではないかと目されるチャン(仮名)という男の捕縛命令がぽしゃったところから話は始まります。何故かHumint(人情的情報収集活動)の葉山のところに、チャンの走り書き──というより文字の練習帳めいたメモ書きが分析に回ってきます。葉山の普段の主な役割は、情報価値がほとんどないと判断される人間その他の媒体を、本当に情報価値がないかどうかを判断するというようなもの(下っ端なんですね(笑)。)。

 とにかくこのチャンが好人物なんだ、実に真っ当、実に当り前。もちろんその手を汚しているわけなのですが、どこがって言われると表現しづらいですが、あえて言えば自分の出来る範囲内の誠実さで人と対しているように見えます。

 このチャンの最後の大仕事と、彼の国を違えたふたつの家族がストーリーの核です。タイトルはそれを象徴する印。有能なスパイである彼の足跡を追っていく内に、仄見えてくる情めいたものに、葉山は違和感を強めていきます。彼の感情がもうひとつの核。