女王国の城 (創元クライム・クラブ)
作者 有栖川 有栖
価格 2,310 円
出版社名 東京創元社
出版年月 2007/09
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    第8回 本格ミステリ大賞  受賞
江神を追い信州入りした英都大学推理研の面々は、女王が統べる「城」で連続殺人事件に遭遇する。囚われの身となった一行は脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。待望のシリーズ書き下ろし第4長編。

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■読者の評価     おすすめ度平均

全部がパズルみたいでした       おすすめ度
前作より15年ぶりの江神シリーズ。
うれしくて、でももったいなくて、なめるようにして読みました。
相変わらず面白かった!

大学に姿を見せない江神部長の身を案じて、捜索に乗り出す推理小説研究会御一行。
どうやら江神は、急成長のしている宗教団体<人類協会>の聖地、神倉に向かったらしい。
<城>と呼ばれる総本部に江神がいることは確認できたものの、なかなか彼に会うことができないアリスたち。
だが一度城にはいってしまうと、今度は…

殺人事件とその真相自体は「そんなんありか!」といった感じだったのですが、急成長している新興宗教とアリスたちとのやり合いや、途中の脱走劇なんかがスリリングでおもしろかったです。
随所に入る、アリスやマリアのUFO談議やミステリ談義なんかも、懐かしさに頬がゆるんでしまいます。
本命の事件だけではなく、江神さんが神倉に赴いた理由、人類協会が警察を呼ばなかった理由、など、小さな謎がきちっと解明されるところが、本当に気持ちいい。

長い小説ですが、表現のひとつひとつがパズルのようでした。
大好きな作家です。


待った甲斐が…?       おすすめ度
江神シリーズは本当に久しぶり。楽しみにしていました。

本の厚さに少しビビりました。それでも、タイトルに興味津々だったので、とにかく読んでみようと思った。
なかなか読み進めなかったため、途中の『読者への挑戦』もどうでもよくなり、早く犯人を知ってすっきりしたいと思った。だが、犯人を知っても驚くこともなく、警察に知らせなかった理由がわかっても、そうだったのかと思うだけ。
そこにたどり着く道程が長かったわりに、意外性は低い感じがした。
待った甲斐があった、と言えないのが淋しい。
前作が大好きだったから余計にそう思うのだろうか?


後半の加速度が良かった       おすすめ度
江上シリーズ第4長編。

英都大学推理小説研究会の部長、江上は急成長中の新興宗教、人類協会の聖地のある神倉へと向かう痕跡を残し、部員達の前から姿を消す。

部長の身を案じる部員達は、その姿を追い、神倉、そして人類協会の施設へと入る。

無事、部長と再開を果たすのも束の間、殺人事件に巻き込まれていく。

今回は、新興宗教の施設内が舞台。クローズドサークルの設定にも余念がなく、謎も丁寧に解かれていっております。

前回の「双頭の悪魔」の時は読んでいる途中、暗い雰囲気を感じていたが(でも傑作)、今回は殺人事件を扱いながらもそれほど暗い雰囲気を感じませんでした。

施設から脱出をはかるところなど、楽しく読めました。


ゆるやかな流れ、加速する終盤       おすすめ度
前作「双頭の悪魔」から15年7ヶ月!待望の江神シリーズ第4長編は期待を裏切らないおもしろさでした。
読者の挑戦までの440ページは殺人事件がおこる舞台としては比較的ゆるやかな展開。
ライトな宗教団体の閉鎖された村と城から脱出を試みる登場人物達も子供の鬼ごっこやかくれんぼのようで差し迫った緊迫感は少ないです。
マリアやアリスの青春小説としての切なさも随所にちりばめられ一気に読んでしまいます。
しかしラスト60ページの解決で小説のテンションは一気に上昇。このゆるやかな流れから終盤加速する構成が見事。
それまでのほのぼのとしたムードを一変させる変転と、まさに混沌に秩序をもたらす名探偵江神の見事なロジック、気づかされる閉鎖空間を覆う大きな謎。
実に切れ味ある解決になっています。
あとがきを読むとこのシリーズはあと1冊の長編と1〜2冊の短編で完結のようです。
愛着のある5人の最後の活躍も早く読めればと思います。


解けそうで解けない       おすすめ度
有栖川氏の学生シリーズには「読者への挑戦」が挿入されている。
これをただ形式的にだけとらえ先を読み進めてしまった人々には、
氏の小説の面白みは半減しているかもしれない。

だが、「読者への挑戦」を真に受けて、もしくはそれ以前のどこかにおいて、
本を閉じてバカ正直にも謎を解こうと挑戦した人間ならば、
この小説がいかに解けそうで解けない微妙なラインに構成された物語なのかが分かり慄然とするだろう。
手が届きそうで届かない。解けそうで解けない謎に身悶える。
学校のテストに例えるなら、これは本当に『いい問題』なのだ。

女王国の城では特にそれが顕著であった。

この本を読んだ何千何万という人間の果たして何人がこの真相に肉薄できただろうか。
そう考えると筆者のさじ加減のうまさには舌を巻くばかりだ。

トリックありきで宗教都市を舞台に設定した手法は綾辻的ともいえるが
内容は有栖川氏らしいロジカルな魅力にあふれていた。
江神やアリスや望月等のキャラクターに何の興味を持たない人でも十分に楽しめる。
彼の作品の妙味は青春活劇でなくやはりそのプロットにあるからだ。

学生シリーズ以外には駄作が多いがこれは太鼓判をおせる一冊だった。