赤朽葉家の伝説
作者 桜庭 一樹
価格 1,785 円
出版社名 東京創元社
出版年月 2006/12/28
Amazonの詳細ページへ
    第60回 日本推理作家協会賞   受賞
    本屋大賞 2008年   受賞
「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

それぞれの時代の女性の生き様       おすすめ度
祖母、母、わたしと、3代に渡る女性が描かれている作品です。
「色」を使った表現を多用するなどし、その背景描写の美しさを感じます。
また、祖母や母の波乱万丈の一生に比べると、「わたし」の章では本人も言っている通り、「語るべき新しい物語はなにもない。」のですが、ここで、祖母、母の一生に潜む「謎」を解決するべく、「わたし」は奔走します。
その謎を解く「手がかり」は、膨大な祖母、母の一生の記述に含まれているごく小さなものであるため、最初読んでるときは「手がかり」とも思わず完全に見落としていました。
ミステリー小説として手ごたえがあるかどうかと言えば、「わたし」の章でミステリー色が出てくる程度のスケールなのですが、それよりも私は、この3人の女性が苦難の中、それぞれの時代を必死に生きている様子の描かれ方に非常に好感を持ちました。


長いのにちっとも厭きないとこがスゴイ       おすすめ度
いやー、びっくり。凄く面白かったです。
旧家の女3代ということでドロドロ系を想像してたのですが、
大間違いのアッケラカン系でした。

端的に言ってしまえば、1代目は電波系で、2代目はヤンキーで、
3代目はニートなんですが、全く違うタイプの3代に共通してるのは、
ウソをつけない女たちってことです。
この点がこの小説に妙な爽快感を与えているのではないでしょうか。

自分を過大評価も過小評価もしない正直な女たちに、周囲の
人々が度肝を抜かれ続けるお話です。
こんな家なら田舎の旧家に生まれるのもいいなあ、と思います。



母娘女三代それぞれの生き方       おすすめ度
題名とテーマからしてもっと暗いそして民俗学的な作品かと思った。

祖母の万葉の時代には少しはそんな重さがあったし、そのように進んでいくのだと思ったら、全く異なり、テンポも早く、あっという間に山奥の町が現代に飲み込まれていく様を軽妙にテンポよく描いている。
作者が山陰の出身だからかえって日常の生活をそれほどミステリアスに描くのは難しかったのかもしれない。
万葉の時代の「千里眼」や嫁入りそのほか、古き時代の不思議な出来事、民族的な小説がが途中からまったく別物になってしまった。
しかし作者は十分力量がある。テーマとして「山の民」など民俗学的な伝説の方が面白いかもしれないが、むしろその娘毛鞠や瞳子の物語の方がイキイキと描かれていた。
そういった感性的な文学を今の作者に、若くて様々な事を吸収しているこの時期に描いてもらいたい、と思った。
題名からすれば祖母の物語がもっとウエイトを占めるのを期待してしまうが、むしろそれよりもその後に続く二代の物語の方が作者の良さが出ていた。
特に行き場のない瞳子のつぶやきや地方の就職事情など、世代が違う若者の心の中が垣間見れた。


他では体験しがたい不思議な世界       おすすめ度
この小説がもつ何とも表現し難い雰囲気というか世界というか、これは読んでみないと分からないように思います。1冊の本がまるで1年分のドラマを見たような気になります。おそらく読者が自分の中でそれぞれのキャラクターや”だんだんの上の真っ赤なお屋敷”をイメージしていくからでしょう。
この小説の大変重要な鍵になると思いますので書きませんが、私はこの作品の最大の魅力は登場人物の名前だと思います。このネーミングがかもしだす独特の世界は他に類が無いでしょう。実に上手いと思いました。中でも黒菱みどりのキャラは最高ですね。


戦後から未来へ貫く烈女の系譜       おすすめ度
女性にとっての自由とは何か。自由を手に入れることができたのか。
三代を経て、ようやく好きな男と寄り添うことを許された。この小説は50年がかりの恋愛の歴史だと、私は感じた。
近代から現代に移り変わる時代を、駆け足で著者は追う。そのスピードにいささかたじろいだ。
自分にとってあっという間に感じるとしても、それ相応の年月を要して経験を積み重ねてきた。その時間が、限られた紙数の中に折り畳まれて、ほんの数行で片付けられていく。
自分の生きている時代が、いつか未来において歴史として語られるときには、こんな風になると未来視させられたような体験だった。
淡々と描く文章は、古めかしく堅苦しく見せておきながら、人を食ったような表現をさらりと含み、どきりとさせられたり、笑わせられたり。
読み応えがあり、反省も込められつつ、けれども希望の残される、よい本だと思った。しばらく余韻をゆっくり噛み締めていたいと思う。