私が語りはじめた彼は
作者 三浦 しをん
価格 1,575 円
出版社名 新潮社
出版年月 2004/05/25
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    本屋大賞 2005年   受賞
「彼」のなにを知ってるのか? 「私」のことさえよくわからないのに…。闇を抱えつつ、世界は今日も朝を迎える。男女と親子の営みを描く、「ミステリ+心理小説+現代小説」という連作短篇。『小説新潮』連載を纏める。

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■読者の評価     おすすめ度平均

好き嫌いが別れる本       おすすめ度
なぜかもてる、大学教授の村川融←ぶさいくな中年(笑

彼をとりまく、妻・略奪女・子供・教え子・教え子の彼氏・・・

そんな人たちが、村川について語ります。

村川は一回もでてきません。

最後、死にます(笑 

なんていうのだろう。。。

けっしてドラマティックではなく、まして純愛でもなく、

それぞれの立場の人間のエゴが、ごっつんごっつんぶつかり合い。

でも、淡々としている。

当たり前のことだけど、人間のすべてが、

自分が主人公なのだなぁと。

好き嫌いが別れる本かも知れないです。

盛り上がりとか、起承転結とか何もないです。

でも、妙に心に残る本でした。


一人の男を巡る物語       おすすめ度
物語の核になる教授が、どういう人物なのか今ひとつわからない。わからないままでいい、
という著者の考えなら、前振りの割に「さほど語るべき事のない男」と推測します。
でなければ、彼の視点からの話が一つはあるべきではないかと思いました。

純文学の好きな人が書いた、純文学の本という気がしました。
一人称なので仕方ないのですが、相手のことをよく伝えないまま、
こうである、と見た側から言い切ってしまうところに、都合のよさも感じました。
そう言われたら、読んでる方はそう思うしかないし。いや、そう思って欲しいんでしょうけど。
ひたすら美しくて鬱陶しい。紙の上の美しさと言葉では、あまり共感できません。
なので、最後の彼の告白も少々上の空に聞こえてしまいました。
あなたがそこまで陶酔して語る心理過程が、こっちには見えてこないよ?と思いました。

ちょっと退屈でした。


静かに語られる気持ち       おすすめ度
村川教授を取り巻く人間達により、静かに淡々と、村川との係わりによって歪んでいった人生や気持ちが語られていきます。冒頭は文章が硬く感じ、読みずらかったのですが、読み進めるうちに様々な語り手たちの気持ちに共鳴できる部分を自分の中に発見し、引き込まれていきました。語り手たちが村川による影響を引きずりつつも、最後にはそれぞれ歩みだしてゆく部分に救いを感じました。


恋し恨めしいと愛し       おすすめ度
寝盗った者と寝盗られた者。その間に、寝盗られた者を裏切った者がいる。
裏切り者と寝盗った者は、物語のはるか遠景で二人だけの幸せに浸り、ほとんど不在である。この本は、裏切られた者たちが、紡ぐ連作だ。
一方的で、理不尽で、裏切りは、愛と自尊心の両方を傷つける。その嘆きが、読んでいて息苦しい。
思っても思っても想っても思っても、思い知らせることのできぬ思いは無駄であっても、時間がすべてを私ごと過去にと追いやることができる。
裏返せば、この喪失だけが残されたもの、誰にも奪えぬ私だけのもの、私の一部になったあなた、死ぬまで抱く愛のようなもの。
その傷つきは消えることはなくとも、もっと他の他者に関わりあうこともできる。裏切りをどうでもよい思い出の一つにしてしまうことも。
裏切られたという受身で無力な自分に、主体性を取り戻す。かすかな希望を最後に感じた。


直木賞作家       おすすめ度
この男 つまり私が語りはじめた彼は 若年にして父を殺した その秋 母は美しく発狂した

上記の詩からインスピレーションを受けた著者が綴る連作短編小説。
村川教授によって微妙に人生を狂わされた人々。
妻、愛人の夫、教え子、息子……
彼らが自分の人生を、そして村上教授の人物をそっと語っていく。

まず文体。かなり繊細な雰囲気をかもし出しているのに芯はかなり強い。静かで強い表現力にびっくり。ここまで実力者だったとは…!!
三浦しをん恐るべし。

登場人物たちは皆どこか歪んでいる。
でも最後にはみんな自分なりの選択をし、先へ進んでいく。村川教授の影を振り切るように。影なんか最初からなかったかのように。
あるいは影を全部受け入れるかのように。
読んでいて、なんともいえない妙な連帯感を感じた。ああ、そうそう嫉妬ってそういう風にするんだよねとか、その歪みが魅力に感じたりするんだよね、とか。

明暗を併せ持った雰囲気のある小説でした。
長く続いた雲間から曙光が差す寸前のような。
純文学が好きな人は絶対はまります!!
建物が爆発したり猟奇殺人が起こったりはしないけど、心がゆっくり動くのが感じられる本でした。