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一方で、ミステリーとしての充実度はどうだろうか。伏線や理屈などきちんとつながってはいるが、ストーリーとして盛り上がりに欠ける感はないだろうか。読んでいて恐怖感もない。カケルvsイリイチの対決もいいが、作品ごとに、もっと輪郭をくっきりと描かなければならない。「知ってる人は知っている」ということでファンに頼っているのはいただけない。実際のところ、笠井潔氏の作品を相当程度まで理解している読者は少ないのだ。
でも後半になると、執拗なまでに書き込まれている推理や薀蓄が少し邪魔でした。それらが物語のスピード感を邪魔してる印象です。
矢吹駆シリーズに独特の哲学的な文章も、内容的には『哲学者の密室』からそんなに大きく展開していない気がする。フーコーをモデルにした人物が登場して場を盛り上げてはいるけれど、ハイデガーが出てきた前作に比べるとその登場する必然性が薄い感じが。
ただ、これまでの駆シリーズとは全体的に色合いの違う作品なので、これまでの作品と比べても仕方ないのかも。ひょっとすると笠井先生は何か新しいことを試みたのだけれど僕に読み解けなかっただけということも考えられます。皆さんはいかがでしょうか?
をモチーフにした物語を語って行く。孤島をテーマにした綾辻作品や、英国女
流作家の複数の作品を彷彿させるモチーフを複合構築させて、俗にいう新本格
推理小説は進んでいく。「外論」など、途中執拗に繰り返される哲学的な記述
は、後半、密室トリックの文学的な位置付けに取り組んだ著者の姿勢が判るよ
うになっているところも評価したい。探偵小説の評論も著す笠井独自の世界を
堪能できる作品になっている。ずしりと感じる本の重さに背かない、重厚な作
品といえよう。最後、犯人が**するところだけ、唯一不満を感じた。
ただ他のレビューを書かれた方々も同様だと思うのですが、この作品に対しての否定的な意見はむしろ「笠井氏の力量はこんなものではない」という信頼と期待の裏返しであるのでしょうし、10作品を目指すと宣言されているカケルシリーズに「バイバイ」や「哲学者」で与えてくれたあの興奮がもう一度甦る事を私も切に期待、そして信じています。
ただ、身近に犯人がいるにもかかわらず、その恐怖心が表現出来てなかったり、心理状態には多少の難はあると思うが、極力こうした叙述的部分は廃して、状態の結果と探求に徹したところはさすが笠井潔である。
『哲学者の密室』を凌ぐ大作となった本書。それよりは物語の展開を追い易い作品となっているが、いずれにせよ今世紀を代表するミステリーであるのには間違いない。本格推理ものはかくあるべしと世に問いかけた一大傑作。これを読まずに日本のミステリーは語れない!!

