犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)
作者 米澤 穂信
価格 1,680 円
出版社名 東京創元社
出版年月 2005/07/21
Amazonの詳細ページへ
何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

〈紺屋S&R〉の初仕事       おすすめ度
▼STORY

 銀行員の職を辞し、東京から故郷の八保市に戻った二十五歳の青年、
 紺屋長一郎は、犬探し専門の調査事務所〈紺屋S&R〉を開設する。

 しかし、そんな彼のところに舞い込んできた
 依頼は、失踪人捜しと古文書の解読だった。

 それでも、高校の後輩で押しかけ助手になった半田平吉とともに、
 調査を開始した紺屋だったが、次第に二つの依頼に奇妙な接点が現れて……。


▼EXPLANATION

 私立探偵小説において〈失踪〉はメインモチーフです。

 本作に限らず、多くの作品が失踪人調査の依頼を受ける
 場面から始まっています。

 そして、探偵が失踪人の行方を追うなかで、
 彼らが失踪せざるを得なかった状況が浮き彫りになり、
 そこに現代社会の歪みや不条理が映し出されていくのです。

 紺屋も、自分と同じく、傷ついて東京から出戻った失踪人、
 佐久良桐子に対し、シンパシーを抱くようになるのですが……。


 終盤、巧妙に張り巡らされていた伏線が回収されることで、
 物語が鮮やかなツイストを見せ、事件の構図が反転する
 展開は、圧巻です。


 そして、現代において、ただ「普通」であることが、
 いかに困難であるかを改めて痛感させられます。


 それでも、今回の仕事によって「再起」は果たした紺屋。

 戦慄すべき結末ではあるものの、彼が最後にもらす、
 落語の下げのような述懐には、意外なしたたかさも
 含まれているように感じるのです。


ラストはちょっとホラー?なミステリーです       おすすめ度
安定した生活を求めて日々過ごしていたのに、それが叶わなくなってしまい、
田舎に戻って再起復活のため犬探し専門の探偵事務所を開くという話です。
そこに舞い込んできたのは人探しと古文書の解読だったわけですが…。
この二つの依頼は早くから繋がりをみせ、どうなるのかなと思っていたら、
思わぬラストが待っていました。
謎の全てはどこまでも冷静に考えての行動の結果でしたが、人間は追い詰められると
怖いと心底思いました。


紺屋S&R・開業       おすすめ度
とある事情のため、職を辞した25歳の青年・紺屋長一郎が
犬専門(!)の調査事務所〈紺屋S&R〉を開き、再起をはかろうとする物語。
(ちなみに〈S&R〉とは〈サーチ&レスキュー〉のことです。)


著者の作品としては、はじめて成人が主人公を務めます。

人物造形や設定、文体は樋口有介氏の諸作を彷彿と
させますが、よりドライで現代的な雰囲気です。


本作において大きなテーマとなるのは、ネットという
環境下で増幅され、連鎖していく人の悪意です。

現代においては、第三者であったつもりが、いつのまにか
当事者にされ、理不尽な暴力にさらされる可能性がある――
という現実の酷薄さに、今更ながら戦慄をおぼえさせられます。


もっとも、何事にも「闇」があれば「光」もあり。

本作では、ネットの「善」の象徴として、紺屋のチャット仲間・GENが登場します。
紺屋にとってGENは直接の面識こそないものの、あらゆる相談に親身に応じてくれる存在。
そもそも紺屋S&Rも、彼(彼女?)のアドバイスをきっかけにはじめたものです。

こうしたGENの人物造形は、著者の〈古典部〉シリーズに登場する折木供恵と通底
しており、作中に直接姿は見せないけれども極めて重大な示唆をもたらす存在
――いわば〈彼岸の人〉として形象化されているといえるでしょう。


本作はシリーズもので、続刊も予定されていますが、上記の事情から、
今後GENが作中に姿をあらわす可能性はほとんどないといえます。

しかし私としては、実は紺屋とGENが過去に面識があって……という展開も
おもしろいかなあ、などと妄想を逞しくしてみたりもしていますw


ともあれ、シリーズ第2作『流されないで(仮)』の刊行が待ち遠しいです。




好き(≧ω≦)b       おすすめ度
エリート街道まっしぐらだった主人公・紺屋は、銀行に就職すると、ストレスから皮膚病にかかってしまいます。
あまりの酷さに営業にならず、田舎へドロップアウト。
田舎に帰ってからわずか一ヶ月で皮膚病が治り、始めたのが犬捜しの会社。
しかし初めての依頼は人捜し。
さらには、紺屋の後輩で、探偵に強い憧れを抱くハンペーが無理やり手伝い始めることに。

渋々探偵をやるはめになった紺屋と、探偵に憧れてヤル気満々のハンペーとの温度差が笑えますw
『トレンチコート、ドライマティーニ、リボルバー!』調査の間、探偵に浸りきっているハンペーの胸中は、微笑ましいですv

ストレスから抜け殻になっていた紺屋ですが、社会復帰するにあたり、周囲の様々な人がそっと優しく助けてくれるのが、読んでいて心地良かったです。

まず、開業初日から依頼者が来るんですが、それは町役場に勤める大南が、近隣住民に宣伝してくれていたお陰でした。

更に、ネットに詳しいチャット仲間のGENも、知識や技術を使い、紺屋を手助けしてくれます。
無機質な世界に通う人情に、あったかい気持ちになりました。
そして、憎まれ口を叩きつつも、足になってくれる妹。

人捜しは思わぬ展開をみせます。

結果は、ハッピーエンドとは言い難いんですが、私は納得できました。
やたら正義をふりかざす探偵より、好意を抱けるかも…

おすすめですv


「よって件の如し。」にはならなかった事件       おすすめ度
 自分が、インターネットも、中世の歴史も中途半端な知識しか持っていないせいなのか、現実にありそうに思えてゾッとしました。
 犬専門の調査員のはずの紺屋も、半シロートのおしかけ探偵のハンペーも、意外と優秀なのですが、それが逆に運のつき…、といった感じでした。