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第130回 (2003年下半期) |
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金原 ひとみ(著)
集英社 (2003/12 発行)
【定価】 1,260円 |
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べつに、わたしが死んだって何も変わらない。ただ痛みを感じられることだけが、生きている証。刺青も、ピアスも、わたしを他人から遠ざけて守ってくれるもの。ひとつの傷害致死事件から、静かな生活が崩れはじめる。すべてを失ったとき、主人公・ルイが見るものは…? 斬新なテーマで人間の存在価値を問いかけた話題作。
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第129回 (2003年上半期) |
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吉村 萬壱(著)
文藝春秋 (2003/08 発行)
【定価】 1,200円 |
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物語の主人公は、高校で倫理を教える25歳の平凡な教師中岡慎一。アパートで独り暮らしをする慎一の前に、半年前に知り合った23歳のソープ嬢サチコが現れる。サチコは慎一のアパートに入り浸り、昼間は遊び歩き、夜は情交と酒盛りの日々を送る。サチコの夫は刑務所に服役中で、ふたりの子どもは施設に預けたままだが、詳しい事情は明らかでない。慎一はサチコを伴い車で四国に旅立つが、幼稚な言葉を使い、見境なくはしゃぎまわり体を売るサチコへの欲情と嫌悪が入り交じった複雑な感情は、慎一の中で次第に暴力・殺人願望へと変容していく。慎一は、自身の中に潜在する破壊への思いを、カマキリに寄生するハリガネムシの姿に重ね合わせる。
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第128回 (2002年下半期) |
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大道 珠貴(著)
文藝春秋 (2003/02/25 発行)
【定価】 1,300円 |
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「しょっぱいドライブ」は海沿いにある小さな町を舞台に、34歳の実穂と60代前半の男性九十九さんの微妙な恋愛関係を、語り手である実穂の視点から描く。実穂は家族ともども、長年にわたって九十九さんの人の良さにつけ込み多大な世話を受けてきた。父が亡くなり実家で暮らす兄とも疎遠になる中で、実穂は隣町でアルバイトをしながら独りで生活する日々を送っていた。実穂は地方劇団の主宰者の遊さんと関係をもつが、気持ちは次第に九十九さんに傾いていく。九十九さんの運転する車に乗って、生まれ故郷の潮の匂いの漂う町でデートを重ねる実穂。実穂の揺れ動く感情の流れと九十九さんの関係の機微を、作者の筆は正確に描き出す。30代女性と60代男性の恋愛という枠組みの中に、性や介護や経済の問題が示唆される。読者は、タイトルに含まれる「しょっぱい」に込められた多重的な意味内容に注意を向けるべきだろう。
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第127回 (2002年上半期) |
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吉田 修一(著)
文藝春秋 (2002/08/27 発行)
【定価】 1,300円 |
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停車してしまった日比谷線の中で、間違って話しかけた見知らぬ女性。知り合いのふりをしてくれた彼女は同じ駅で降り…。東京のド真ん中「日比谷公園」を舞台に男と女の「今」をリアルに描く。
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第126回 (2001年下半期) |
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長嶋 有(著)
文藝春秋 (2002/02 発行)
【定価】 1,300円 |
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北海道で暮らす小学5年生の慎と母親の1年あまりの生活を描いた作品。大人の内面にはいっさい立ち入らず、慎の視線に寄り添う三人称体による語りが、子ども独特の皮膚感覚や時間感覚をうまく描き出している。さまざまな問題に直面しながらも、クールに現実に立ち向かう母親の姿を間近で見ることで、自らも自立へと誘われていく慎の姿が感動的だ。先行する車列を愛車シビックで「猛スピード」で追い抜いていく母親の疾走感覚は、この作品のテーマに直結している。物語の結末で示される国道のシーンは、読者の心に強く残るだろう。
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第125回 (2001年上半期) |
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玄侑 宗久(著)
文藝春秋 (2001/08/28 発行)
【定価】 1,300円 |
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第125回芥川賞受賞作。予知能力を持つという「おがみや」ウメさんの臨終に際して、禅寺の住職則道とその妻圭子の織り成す会話から、「死とは何か」「魂とは何か」を見つめた作品。先に発表された第124回芥川賞候補作『水の舳先』では、死を間近に控えた人々がそれぞれに救いを求める様子を描いていたが、本作は肉体的な死を迎えた後、いわゆる「死後の世界」を主なテーマにおいている。
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第124回 (2000年下半期) |
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堀江 敏幸(著)
講談社 (2004/02 発行)
【定価】 520円 |
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「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった。
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第124回 (2000年下半期) |
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青来 有一(著)
文藝春秋 (2001/02 発行)
【定価】 1,400円 |
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「聖水」は本当に奇蹟の水なのか。佐我里さんは教祖か、詐欺師か?死を目前に衰弱しながらも、聖水の効用を信じ続ける父と、佐我里さんの商法に反発を覚える息子。スーパーの経営権を巡る騒動と、新興宗教の様相をおびる聖水信仰。死にゆく者にとっての救済とは何かを問う。
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第123回 (2000年上半期) |
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松浦 寿輝(著)
講談社 (2005/06 発行)
【定価】 490円 |
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『花腐し』芥川賞受賞作。多国籍な街、新宿・大久保の片隅、夜雨に穿たれた男の内部の穴に顕現する茸と花のイメージ。少女の肉体の襞をめくり上げ見える世界の裏側。腐敗してゆく現代の生と性の感覚を鋭く描く「知」と「抒情」の競演。
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第123回 (2000年上半期) |
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町田 康(著)
文藝春秋 (2004/04/07 発行)
【定価】 450円 |
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「―― 大きい俺や小さい俺、青空に円形に展開、みな、くわっとした格好で中空に軽くわなないている ――」。親のすねをかじりながら無為の日々を送っていた「俺」はかつて、ともに芸術家を志し、その才能を軽視していた友人が画家として成功したことを知る。しかも、美貌と評判高い彼の妻は、「俺」が見合いをして断った女だという。よじれて歪んだ心が生むイメージが暴走した果てに「俺」が見たものは…。
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