第68回
(1972年下半期)
        
郷 静子(著)   文藝春秋 (1975/01 発行)
【定価】 210円
勤労動員と空襲の日々、周囲のおびただしい死のはざまで、二人の女学生がとりかわした灰色のノートの中の真摯な青春。戦争否定を訴える感動の名篇。

第68回
(1972年下半期)
        
山本 道子(著)   新潮社 (1977/03 発行)
【定価】 336円
『ベティさんの庭』は、洗礼を受けた後ベティというクリスチャンネームをもらって外国に嫁いだ日本人、柚子の物語である。これからこの本を読もうとしている方のために詳しい内容の紹介は差し控えておくが、私は読んでよかったと思っている。特に、「一番美しい年令」のような、アシンメトリーなフランス映画を愛する乙女は、きっとこの小説と共鳴するに違いない。静を感じさせる情景と女心の感情の起伏が絶妙なハーモニーを、この小説は醸し出しているからだ。「肉を大量に買う人間の顔が、肉と一緒に鏡のなかに無様に映る。ベティさんは思う。ほんとに悪趣味な店だ」。何とエレガントな一節でしょう。 

第67回
(1972年上半期)
        
誰かが触った

宮原 昭夫(著)      
 

第67回
(1972年上半期)
        
畑山 博(著)   文芸春秋 (1986/02 発行)
【定価】 387円
肉体的劣等感を正面に据えて真向から凝視、独特の感性とスタイルで第六十七回芥川賞を受賞した表題作。

第66回
(1971年下半期)
        
オキナワの少年

東 峰夫(著)      
 

第66回
(1971年下半期)
         砧をうつ女
李 恢成(著)   講談社 (1991/11 発行)
【定価】 897円
「砧をうつ女」は、第66回芥川賞受賞作品。終戦近い時期、病気で母を失う少年の物語。戦争も、母が朝鮮半島生まれのことも重要な要素なのですが、それが主ではなくて、母親の姿そのものを描いたような作品です。後半の洗濯物のしわ伸ばしをする母親の姿が印象深く書かれているところがすてきです。火のしを使わないとき、重ねた服の上に布地をかぶせて、砧で打つ姿を、息子である少年がじっと見つめていて、母の仕事をしている姿を見るのが好きだと思うなんて、息子を持つ母親ならしびれてしまうようなシーンです。

第65回
(1971年上半期)
        
該当作品なし

第64回
(1970年下半期)
         杳子
古井 由吉(著)   新潮社 (1979/12 発行)
【定価】 460円
 戦後第一世代の作家として著名な古井由吉の出世作。この世代の中では彼が最も「内向の世代」にぴったりな作品をつくりあげているが、特に「杳子」は神経を病んだ女子大生とそれゆえに彼女に惹かれてゆくという主人公の関係を描いた作品なので、余計にその感が強い。しかし、ひとむかし前の作品との違いは、「心理主義」では書かれていないことだ。むしろふたりのやり取りや外的な状況の描写を通じてふたりの心理を浮かび上がらせているという手法が新鮮な印象を与えている。結末が予定調和的にならないのも、このふたりの関係と著者の視点から言っても、ある程度予想のつくことだと思われる。

第63回
(1970年上半期)
         プレオー8(ユイット)の夜明け
古山 高麗雄(著)   講談社 (2001/07 発行)
【定価】 1,365円
「生きていればこんなめにもあう」。理不尽なことも呑み込まなければ「普通の人間」は生きていかれない。22歳で召集、フィリピン、ビルマ、カンボジア等を転戦、ラオスの俘虜収容所に転属され敗戦となり戦犯容疑で拘留。著者の冷徹な眼が見た人間のありようは、苛烈な体験を核に清澄なユーモアと哀感で描かれた。芥川賞受賞の表題作。

第63回
(1970年上半期)
        
吉田 知子(著)   新潮社 (2000/00 発行)
【定価】 294円

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