第17回
(1995年)
         夏至祭
佐藤 洋二郎(著)   講談社 (1999/06 発行)
【定価】 620円
廃坑の町を棄て、人を不幸にした負い目を抱きながら少年は都会に出ていった。いま中年になって、生きていく孤独は癒えない。故郷の土地の匂い、山の息吹が無性に懐しい。呼び戻されるように帰った故郷は、しかし逞しい変貌の中にあった。その活力を受けて、帰郷者はこの地に根を下ろし始める。

第16回
(1994年)
        
竹野 雅人(著)   講談社 (1994/07 発行)
【定価】 1,427円
本人や身内の話ばかりでチンプンカンプン、赤の他人が読んでも果てしなくつまらない話に終始している、見も知らない人の自叙伝というものは何て面白いんだろう。本邦初の自叙伝パロディ文学。

第15回
(1993年)
         草の上の朝食
保坂 和志(著)   中央公論新社 (2000/11 発行)
【定価】 840円
2DKの「ぼく」のアパートにアキラとよう子と島田が住みついて、それぞれがふらりと出かけては帰ってくる4人の共同生活ははじまった―。猫たちのくらしにも似たとりとめのない日常をトレースし、新しい世代のしなやかな感受性を浮かびあがらせた青春小説のイノベーション。

第15回
(1993年)
         ノヴァーリスの引用
奥泉 光(著)   集英社 (2003/05 発行)
【定価】 480円
1979年に起きた一人の若者の死。その状況と原因をめぐって、それぞれの関係者が推理するその口から、また新たな物語が紡ぎ出されていく。懐古にふけっていたはずの彼等は、いつしか自分たちで作り上げた迷宮に踏み入っていく…。言葉によって構築される現実の脆さとそこに潜む謎を描いて一気に読ませる、気鋭の力作。

第14回
(1992年)
         星条旗の聞こえない部屋
リービ 英雄(著)   講談社 (2004/09 発行)
【定価】 1,155円
横浜の領事館で暮らす17歳のベン・アイザック。父を捨て、アメリカを捨て、新宿に向かう。1960年代末の街の喧騒を背景に、言葉、文化、制度の差を超え、人間が直接に向き合える場所を求めてさすらう柔らかな精神を描く野間文芸新人賞受賞の連作3篇。「日本人の血を一滴も持たない」アメリカ生まれの著者が、母語を離れ、日本語で書いた鮮烈なデビュー作。

第13回
(1991年)
        
笙野 頼子(著)   講談社 (1991/10 発行)
【定価】 1,631円
ナニモシテナイ幸福な私がなぜだか自分では気に入らないのだった。10年間ずっと私自身はナニカヲシテキタつもりでいたのだった。――生きていることのリアリティを希求して、現実と幻想の間を往還するモノローグの世界を描いた表題作。

第12回
(1990年)
         ショート・サーキット―佐伯一麦初期作品集
佐伯 一麦(著)   講談社 (2005/10 発行)
【定価】 1,365円
6000Vの高圧盤の扉を曲げ、内部を無残に焼けただれさせる短絡事故(ショート・サーキット)による爆発。電気工として、毛細血管のように都市の隅々まで張り巡らされた電気配線を行うことで見えてくる都市の危うい「現在」。そしてそこで生きる幼子を抱えた五人の家族の父としての姿を描く中篇小説集

第11回
(1989年)
        
伊井 直行(著)   講談社 (1989/09 発行)
【定価】 1,223円
「社内局」経由で配付した会議用資料を回収することになったかれ。ところが「社内局」とはいったい何なのか、どこにあるのか、だれも知らない。たった1人、会社という迷宮をさまよう羽目におちいった困惑の1日――。

第10回
(1988年)
        
吉目木 晴彦(著)   講談社 (1988/09 発行)
【定価】 1,470円
父親の仕事の都合でルイジアナ州バトンルージュで暮らす日々を、両親や周囲の人々、風物を少年の目を通して書きとめた新しい形式の短編集。深南部に住む異邦人としての非適応感覚をクールに、しかしユーモアも交えて捉えた意欲作。

第9回
(1987年)
        
新井 満(著)   新風舎 (2003/10 発行)
【定価】 515円
青山墓地に近い老朽アパートに住む、駆け出しのフリーCF演出家・雨宮三郎は、絵コンテを描く難聴の有泉遙子と出会う。彼女が弾くピアノ曲をきっかけにエリック・サティの音楽へ没頭した三郎は、奇妙な曲「ヴェクサシオン」に取り憑かれる。苛だたしいほど美しく愛らしいこの作品は、三郎の鼓膜の内側に滑り込んでいく…。二人の出会いを通して綴られる音楽と文学と絵画の三重奏。

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